スキヤキで来日したホンジュラスのアウレリオ・マルティネス、
予想外といっちゃあ申し訳ないけれど、すごく良かったです。
温かみのあるヴォーカルはCD以上にいい声だったし、
ナイジェリア、ヨルバ直系のダンスを披露したのにも、意表を突かれました。
おぉ、ガリフーナのルーツは、ヨルバだったのかあと、目ウロコでしたよ。
これまでガリフーナ音楽というと、亡きアンディ・パラシオの印象があまりに強く、
アウレリオは影が薄かっただけに、すっかり見直してしまいました。
アンディ・パラシオは、ガリフーナの伝統に回帰したストーンツリーの諸作で、
従来の中途半端なミクスチャー音楽に過ぎなかったプンタ・ロックを、
いきいきとした中米アフロ・カリビアン音楽として現代に蘇らせましたけれど、
アウレリオはアンディとはまた別のアプローチで、
プンタ・ロックをもっとポップに前進させられる人なんじゃないでしょうか。
そう強く感じさせたのが、バンドのリード・ギタリストの存在。
時代錯誤といえる、60年代ライクなサーフ・ロック・ギターは痛快でした。
最初はシャレか?とも思いましたけど、この人のスタイルなんですねえ。
一聴ミス・マッチなギターが、アウレリオの音楽をよりヴィヴィッドに響かせていて、
楽しくなっちゃいました。ライヴだといっそう盛り上がりますよ。
なんでレコーディングでは、このギターを使わなかったのかなあ。
“LĀNDINI” で弾いている、グアヨ・セデーニョと同一人物なのかどうかは
確かめられなかったんですけど、もしプロデューサーのイヴァン・ドゥランが
サーフ・ロック・ギターをイヤがって弾かせないようにしたのだとしたら、問題だなあ。
あくまで憶測なので、もしもだったらの話ですが、マジメな伝統回帰のアプローチのせいで、
こういうポップ・センスを敬遠するようだったら、困りもの。
これがぼくの見当違いなら、ごめんなさい&前言撤回なんですけれど、次回作はぜひ、
このサーフ・ギターとガリフーナ・ドラムを生かしたプロデュースを期待したいものです。
ガリフーナ音楽に特有の、深い哀愁のこもったメロディを、
サーフ・ギターで歓喜の祝祭へと転化するエネルギーは、
プンタ・ロックを新たな地平へと進化させる可能性を感じさせます。
Aurelio "LĀNDINI" Real World CDRW205 (2014)