石若駿が昨年結成した新グループ、SMTKのアルバムを聴いて、
強烈に耳残りしたのがサックスのプレイでした。
石若がフックアップした、松丸契という新人だと教えられ、
スゴイ人が出てきたなとは思っていましたけれど、
初リーダー作を聴いて、こりゃとんでもない逸材だと衝撃を受けました。
いきなり冒頭からマルチフォニックをかまして、リスナーを驚かせるんですけれど、
こういう若々しい気負いが、めちゃ好感持てるじゃなですか。
空気読んでばかりの大人しい若者がやたらと目についたひと昔と違って、
ここ数年、気骨を感じさせる若者がすごく増えてきたように思えて、
おとうさんは嬉しいよ。子世代に追い越される喜びは、
子育てを終えた親世代だからこそ持てる心持ちでありますね。
フリーに寄せるインプロもやれば、音響的なアプローチも聞かせる一方で、
美しく作曲されたメロディを色彩感のあるトーンで紡ぎもする。
いわゆる○○派だとか××系に属することを良しとしないというか、
どこにも属さない自由なポジションを獲得している強さが、
旧世代にないヴァーサタイルな新世代の開かれた魅力ですね。
バックは、松丸を見出した石若駿が07年以来活動してきたレギュラー・グループのBOYS。
ベースの金澤英明にピアノの石井彰の二人は、
日野皓正を長年支えてきたヴェテラン・プレイヤーで、
新旧世代の4人が組み合わさったことで、互いに触発し合う空間が生まれ、
刺激的なアイディアが散りばめられています。
いまや長老といった風格さえある金澤は、安定感あるプレイばかりでなく、
スピリチュアルなオリジナル曲を提供しているところも聴きどころ。
その曲「暮色の宴」は、ダウンロード・アルバム未収録で、
CDのみの収録ですけれど、こういうタイプの曲があることが、
アルバムに奥行きを生み出していますね。
コンテンポラリー、フリー、アヴァン、どこにも属さず、
いまのまま自由にはばたいて、才能をどんどん広げていってほしい、
期待の若手です。
松丸契 「NOTHING UNSPOKEN UNDER THE SUN」 Somethin’ Cool R2000191SO (2020)