バウとヴォギーニャ、カーボ・ヴェルデを代表する名ギタリスト両名の共演作。
15年に出ていたとは知りませんでした。
二人がソロ作を出すルサフリカやセルロイドなら、国際的なマーケットにのるけど、
カーボ・ヴェルデのレーベルじゃあ、情報すら入ってこない視界不良状態ですよぉ。
しかもこれは第2作で、二人は07年に本作と同じボア・ムジカから、
“RELEMBRANDO OS MESTRES” を出しているそう。
そんなの、誰も知らないって!
愚痴はこのくらいにして、あらためて二人のご紹介。
バウは62年生まれ、ヴォギーニャは61年生まれと、同世代のギタリスト同士。
セザリア・エヴォーラのプロデューサー、ジョゼ・ダ・シルヴァにリクルートされ、
セザリアのツアー・バンドとして結成されたミンデル・バンドで、一緒に活動した間柄です。
セザリアが世界的な成功を収めた
91年作“MAR AZUL” のバックを務めたのがミンデル・バンドで、
のちにバウは、セザリアの音楽監督を務めることになります。
ミンデル・バンド単独でも、94年にインストルメンタル・アルバムを残していて、
ジャケットの一番左でバウがカヴァキーニョを弾いていて、
ヴォギーニャが中央でギターを弾いている姿が飾られています。
本作は、二人がカーボ・ヴェルデ音楽の先駆者といえる
ルイス・レンダール(1898-1986)までさかのぼり、すでに故人となった
カーボ・ヴェルデの名ギタリストたちの未発表を含む作品を取り上げ、
カーボ・ヴェルデ音楽の偉大な遺産に光を当てたアルバムなのですね。
1曲目はそのルイス・レンダール作の‘Fox Memória D'Taninho’ で、
古風なフォックス・トロットのメロディが、なんとも優美ですねえ。
今回初めてルイス・レンダールの名を知ったのですが、
なんと38年にミンデーロで録音を残しているんだそうです。
ひょっとしてそれ、カーボ・ヴェルデ音楽最古の録音なんじゃないですかね。
ルイス・レンダールの曲は、もう1曲‘Zenaida’ が取り上げられています。
そのルイス・レンダールにヴォギーニャは、ギターを習ったこともあるそうですが、
ヴォギーニャの父親のタジーニョもまた、カーボ・ヴェルデ音楽の名ギタリストの一人で、
ルイス・レンダールの直弟子だった人。
そのタジーニョ作の‘Ernestina’ も演奏されています。
タジーニョは、60年に船員としてオランダへ渡り、65年にロッテルダムにて設立された
初のカーボ・ヴェルデ音楽レーベル、モラベーザに初アルバムを残しています。
タジーニョが69年に出した“Sucessos Tazinho” から11曲を収録したCDが
最近出たんですけれど、65年オランダ録音を匂わすタイトルは偽りありですね。
このCDには、より後年の録音と思われる2曲も収録されていますが、
トラック・リストに記載がないなど、盤起こしの音質とも仕事ぶりは、難あり。
話が横道にそれてしまいましたが、
このほか巨匠B・レザの曲や二人のオリジナルなど、モルナを中心とする全15曲を、
伴奏者なしの完全なるギター・デュオで演奏したアルバム。
カーボ・ヴェルディアン・ギターのアート・フォームを、くっきりと示した会心作です。
Bau & Voginha "ANTHOLOGIA ACÚSTICA" Boa Música BM012015 (2015)
Mindel Band "MINDELO" Sonovox 11.147-2 (1994)
Tazinho "TAZINHO IN HOLAND 1965" no label no number