オマール・ペンが11年に出した“NDAYAAN” は、
オマールのソロ・キャリアとしては最高のアルバムでしたね。
シュペール・ジャモノの看板歌手として、長年にわたって活躍してきたオマールですが、
“NDAYAAN” は、シュペール・ジャモノと離れ、
フランス人ミュージシャンたちとともに制作したアルバムでした。
コロコロと鳴るバラフォンに柔らかく響くコラの音色にのせて、
優しく歌うオマール・ペンのハイ・トーン・ヴォイスは、
ヴェテランらしい円熟した味を出していて、
音数を抑えたアクースティック主体のサウンドは、シュペール・ジャモノとは対極でした。
フランス人ギタリスト、ティエリー・ガルシアが弾く、
ウクレレやウードが効いていましたね。
余談ですけれど、『ポップ・アフリカ800』に
このアルバムを選盤できなかったのは、残念でした。
ンバラの代表シンガーとして、ユッスーと並ぶオマールの立ち位置をはっきりと表すために、
シュペール・ジャモノとの25周年記念作を選んだので、
ソロ・キャリアのこちらは、泣いてもらったんです。
さて、“NDAYAAN” 以来となる、オマールのスタジオ録音が届きました。
なんと10年ぶりですね。その間にセネガルでは、
シュペール・ジャモノとの40周年記念盤が1枚出ていたようなんですが、
それはぼくも聴いていません。
なんでもオマールは体調を崩して、数年間寝たきりの生活を送っていたらしく、
復調してから、3年をかけてじっくり制作したアルバムなのだそう。
北西部のサン=ルイで深刻となっている海面上昇などの温暖化問題や
テロリズムなど、社会的なテーマが取り上げられています。
新作をプロデュースしているのは、ジャズ・ギタリストのエルヴェ・サンブ。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2018-06-17
驚いたのは、エルヴェ・サンブが全曲を作曲しています(作詞はオマール・ペン)。
曲づくりをすべてエルヴェ・サンブに任せるとは意外でしたが、
エルヴェはヴァラエティ豊かないい曲を書いていますよ。
プロダクションも生音主体で、ヌケのいいサウンドで、
ストリング・カルテットを効果的にフィーチャーしてます。
ドラムスにマコドゥ・ンジャイと、ユニヴァーシティ・オヴ・グナーワのメンバーでもある
フランス人ドラマーのジョン・グランドキャンプを起用したのも成功しましたね。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-05-09
ジョン・グランドキャンプのハネるビートが、気持ちのいいグルーヴを生み出していて、
ハネのない重いビートを叩くマコドゥ・ンジャイと曲によって使い分け、
アルバムに起伏を与えています。
アルバムのハイライトは、ファーダ・フレディとデュエットした‘Lu Tax’。
円熟して落ち着いたオマールの歌声に、
若々しいファーダの張りのある声が引き立ちます。
Omar Pene "NDAYAAN" Aztec Musique CM2340 (2011)
Omar Pene "CLIMAT" Contre-Jour CD037 (2021)