“Yes We Can” と聞いて、オバーマ大統領ではなく、
リー・ドーシーを思い浮かべる皆さん、朗報です。
リー・ドーシーの70年の最高傑作“YES WE CAN” がようやくまともにCD化されました。
いまや名盤中の名盤で知られる“YES WE CAN” はぼくにとって、
ニュー・オーリンズR&Bに初めてイカれた、忘れがたきアルバムであります。
あれは高校2年生でしたねえ。リー・ドーシーを知っていたわけではなく、
アラン・トゥーサンがプロデュースしたレコードというので、買った記憶があります。
当時、アラン・トゥーサンがプロデュースしたザ・バンドの“CAHOOTS” に夢中だったもんで。
ぜんぜん知らない人のレコードをはじめて聴く時は、ドキドキするものですけれど、
ベースのイントロに始まり、ペケペケと珍妙な音を鳴らすギターにのせて歌われる
“Yes We Can [Part 1]” のキャッチーなメロディに、もう即ノックアウトでしたね。
童謡みたいな愛らしいメロディを、ユーモラスなアレンジで聞かせるユニークさは、
うきうきするニュー・オーリンズ独特のハネるリズムとあいまって、
なんともいえないトボけた味わいを醸し出しながら、
ホーン・アレンジは本格的という、奥行きの深いサウンドにマイりました。
ひょうひょうとしたリーのヴォーカルとコーラスのかけあいがまた楽しいのなんのって。
数々のノヴェルティな曲の合間に、哀愁漂う曲がさりげなく差し挟まれているところは、
喜劇役者がふとのぞかせる素顔のようで、ドキリとさせられます。
まだケツの青い高校生にとって、こういう音楽を作れる「大人の」音楽家に、憧れたもんです。
ダン・ヒックスやボビー・チャールズに共通する韜晦味を、リー・ドーシーに感じていたんですね。
クレジットこそないけれど、ミーターズによる軽妙なファンク・サウンドもサイコーで、
フックの利いたシンコペーションが、キモチいいったらありゃしない。
ニュー・オーリンズのハネるリズムの快感を、これほど味わえるアルバムもありません。
その名盤も、アメリカ、ポリドールが93年にCD化した時は、
未発表曲含め9曲追加してくれたのはいいんですが、曲順をバラバラに編集し、
LPを聴き慣れた者には憤懣やるかたないシロモノとなっていたのでした。
そのうえ、B面最後の“Would You?” が未収録という訳の分からない編集は、
正直、欠陥CDと言わざるを得ませんでした。
のちに77年作の“NIGHT PEOPLE” と2イン1にしたCDも出ましたけれど、
今回フィーヴァー・ドリームがリイシューしたCDは、オリジナルLPの曲順のあとに、
LP未収録の同セッション7曲を追加していて、これなら大満足であります。
Lee Dorsey "YES WE CAN" Fever Dream FDCD7510 (1970)