あけましておめでとうございます。
今年の正月は、もうな~んも考えずに、
ポール・デスモンドのボックスを流しっぱなしにして、
だらだら過ごすと、決めたんです。
2年前にモザイクがボックスCD化した、
デスモンド晩年の75年3月と10月に
カナダ、トロントのバーボン・ストリート・クラブで録音されたライヴ音源。
アーティスツ・ハウス、ホライゾンの両LPに、テラークのCDを愛聴した
デスモンド・ファンのぼくも、7枚組に手を伸ばすのは、さすがにためらいました。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2011-11-29
でも、『音楽航海日誌』のひと仕事をやり終えたところで、
ふとこのボックスのことを思い出したのが、運の尽き。
デスモンドなら棚の肥やしとならずに、ちゃんと愛聴できそうだしと、
えいや!とポチったのでした。
既発録音より未発表録音の方が多いという、贅沢な内容で、
10月最後の2夜だけが、ギターのエド・ピッカートが父の訃報で離脱し、
急遽ヴァルヴ・トロンボーンのロブ・マッコーネルを迎えて演奏されています。
晩年のピアノレス・カルテットのデスモンドは、ぼくには格別。
すでにこの時、デスモンドは肺がんの宣告を受けたあとだったはずで、
もはやデイブ・ブルーベック・カルテット時代のヒラメキはないし、
音色の輝きだって失われていました。
それでも、この時期のデスモンドにとても惹かれるのは、
レスター・ヤングの晩年にも似た、名手だけがたどり着ける
枯淡の境地を感じさせるからです。
若いメンバーに囲まれて、なにひとつ気負うことなく、
よどみなく美しいメロディを紡ぎ出すデスモンドのアルト・サックスは、
ジャズを超えた純度の高い器楽奏を演じています
Paul Desmond "THE COMPLETE 1975 RECORDINGS" Mosaic MD7-269