正月休みにポール・デスモンドのボックスを聴いていたら、
チェット・ベイカーの大名作“CHET BAKSER SINGS” との取り合わせが、
絶妙にお似合いだということに気付いちゃいました。
聴いていたCDは、その昔CD化されたブルー・ノート盤ではなく、
昨年秋にイギリスで出たCDブック。
ブルー・ノート盤は、54年に出たオリジナルの10インチ盤の
ジャケットを採用していましたけれど、
このCDブックは、56年に曲数を足して12インチ盤で出した時の、
赤・黄・薄青の三色帯を背景にしたジャケット・デザインを使っていて、
レコード・ジャケットではトリミングされていた部分も見ることができるという、
あの名作を愛するファンには、たまらないものなんですね、これが。
CDのほうも、12インチ盤の14曲に、55年の“SINGS AND PLAYS
WITH BUD SHANK, RUSS FREEMAN AND STRINGS” 所収の6曲を
ボーナス・トラックで追加するという、心憎い内容となっています。
“CHET BAKER SINGS” は、54年と56年に録音されたセッションなので、
その合間の時期に同じメンバーによって録音された曲を追加しても、
まったく違和感なく聞くことができます。
こういう余計な蛇足にならないボーナス・トラックは、嬉しいですねえ。
80ページの本には、スコットランド人ジャズ・ライターのブライアン・モートンによる
解説と、80年代にチェツトと共演したイタリア人ベーシスト、リカルド・デル・フラの
短いエッセイが載っています。
ポール・デスモンドとチェット・ベイカーといえば、
どちらもウェスト・コースト・ジャズの代表的なミュージシャンだったにもかかわらず、
50年代には共演しておらず、
70年代に入ってCTIの一連の作品(『枯葉』『アランフェス協奏曲』)
で共演することになったんですよね。
CTIの『枯葉』(“SHE WAS TOO GOOD TO ME”)も、もちろん悪くないんですけれど、
やはり50年代のチェット・ベイカーの<青い>色気は、もう格別ですよね。
悪魔的といってもいい魅力ですよ。
その魅力は、ジョアン・ジルベルトとも似ていますね。
ジョアン・ジルベルトも70年代に魅力的な作品を残しましたが、
58~61年のオデオン3部作の、圧倒的な妖しさにかなうものはありません。
ひさしぶりに若き日のチェット・ベイカーを聴いて、
若さが生み出す色香にあてられました。
それは、妖気と呼んでも過言ではないんじゃないかな。
[CD Book] Brian Morton "THE MAKING OF CHET BAKER SINGS" Jazz Images 83310