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忘れじのレコード屋さん その7 【パイドパイパーハウス】 

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雪村いづみ  SUPER GENERATION.jpg   Gabby Pahinui  THE GABBY PAHINUI HAWAIIAN BAND.jpg 

前々回と前回の記事で、思い出したことがあって、
10年ぶりに「忘れじのレコード屋さん」シリーズの復活です。
 
伝説化したパイドパイパーハウスについては、
すでに多くの人が語っていて、私ごときが、なにをいまさらなんですが、
たぶんこの方面の話題なら、誰も語っていないのではという話をひとつ。

ウェスト・コースト・ロックにAOR、オールディーズやニュー・オーリンズ方面に
強かったお店であったことは言わずもがなですけれど、先日話題にした、
雪村いづみの『SUPER GENERATION』のアルファから出た限定盤を
置いていたお店でもあったんですね。

当時、日本コロムビアから出たシングル・ジャケットのレコードで聴いていたので、
見開きジャケットの『SUPER GENERATION』を
パイドパイパーハウスで見つけたときは、???と思ったのでした。
お店の人(あれは岩永正敏さんだったのか)に訊くと、
「それねえ、限定盤なんだよ」と言うじゃありませんか。

日本コロムビアではなく、アルファと書かれたライナーノーツとポスターが付いていて、
レコードのセンター・レーベルは、雪村いづみの横顔写真となっています。
見開きジャケット内は、日本コロムビア盤の裏ジャケットの元デザインで、
裏ジャケットは、表ジャケットの色彩を変えた別ヴァージョンという豪華版。

これは買い替えなきゃと思っていたら、
「サインが入っているのもあるよ」と、奥から在庫を出してくれるじゃありませんか。
喜び勇んで、裏ジャケットに雪村いづみさんのサインが入ったレコードを
いただいてきたのでした。

のちにこの『SUPER GENERATION』は、アルファが原盤制作をして、
日本コロムビアへ提供されたレコードで、
日本コロムビアの通常盤以外に、アルファから限定盤が出ていたことを知りました。
ただ、不思議なのは、このレコードが発売されたのは74年7月で、
パイドパイパーハウスがオープンしたのは、それより1年以上も後の75年11月。
それなのに限定盤を在庫していたのは、のちに店長となった、
当時キャラメル・ママのマネージャーだった長門芳郎さんのコネクションでしょう。

Brute Force Steel Bands Of Antigua.jpg   The Mighty Sparrow Sings True Life Stories.jpg

さて、もうひとつ、パイドパイパーハウスで案外知られていないのは、
民俗音楽のレコードにけっこう力を入れていたことで、
フォークウェイズやクックのレコードは、ここでよく買いました。
あと、レゲエやカリプソも、トロピカル・ミュージックと謳ってプッシュしていましたね。
マイティ・スパロウの“SINGS TRUE LIFE STORIES OF PASSION, PEOPLE, POLITICS”
を買ったのもここ。
それでよく覚えているのが、ライ・クーダーと“CHICKEN SKIN MUSIC” で共演して
話題となった、ハワイのギタリストのギャビー・パヒヌイのレコードです。

ライ・クーダーが共演を申し出たミュージシャンというので、興味シンシンだったんですが、
北中正和さんが「ニューミュージック・マガジン」76年12月号で、
「ギャビー・パヒヌイ・ハワイアン・バンドで2年前にライ・クーダーを
ゲストに迎えたアルバムをハワイで出したことがある(Panini Records PS1007)ので、
興味のある人は新婚旅行でハワイに行く友だちにでも買って来てもらえばいいだろう」
と書かれていたんですね。こんな一文を読んだら、そりゃあ欲しくなりますよね。

とはいえ、当時高校生の自分に、新婚旅行でハワイにいく友だちがいるはずもなく、
どうしたものやらと地団駄を踏んでいたんですが、
パイドパイパーハウスがパニニ盤を、まっ先に入れてくれたのでした。
その後、他の輸入盤店も入れるようになりましたけれど、
日本で最初に入れたのは間違いなく、パイドパイパーハウスです。

そんなふうに、アメリカやヨーロッパの音楽以外にも、目配りしていたお店であったことは、
シティ・ポップ/渋谷系再評価の文脈ばかりで語られがちな
パイドパイパーハウスの、あまり語られていない側面なんじゃないかな。

それが証拠に、その後沸き起こったサンバ・ブームでは、
前回紹介したブラジル盤の『お爺サンバ』のレコードを猛プッシュしたのも、
パイドパイパーハウスでしたからね。
たしか、お店のベスト・セラーにもなったんじゃなかったっけ。

宝島78年12月号.jpgそういえば、パイドパイパーハウスをモデル
にした記事をメインにした雑誌があったことを、
思い出しましたよ。棚を探してみたら、あった、
あった。宝島78年12月号『大研究! 輸入レコード
&ショップス」』。
その記事は「輸入盤専門店「宝島」本日開店!」。
このほか「輸入盤専門店 13 GUIDE」という記事には、
パイドパイパーハウスをはじめ、
このブログでも取り上げた芽瑠璃堂や
ディスコマニアが紹介されています。

なんでこんな古い雑誌をわざわざ
とっておいたかというと、別のページに、
このブログのオーナーが作った自主制作盤の紹介記事が
載っているからなんでした。
しかもそのレコードは、パイドパイパーハウスの
自主制作盤コーナーに置かれて売られていたのです。
同じコーナーには、日本を代表するスラック・キー・ギタリスト、
山内雄喜さん若かりし頃のパイナップル・シュガー・ハワイアン・バンドの
自主制作盤も一緒に並んでいたのでありました。うふふ。

余談が長くなりすぎましたけど、パイドパイパーハウスの向かいの
嶋田洋書も、よく通ったものです。パイドパイパーハウスぽい話題でいえば、
ノーマン・シーフの写真集“HOT SHOTS” をここで買いましたね。
日本版と内容が少し違っていて、ダン・ヒックスの写真が入ってたのが嬉しかったな。
どちらのお店も、高校・大学時代のデート中に立ち寄りしても、
彼女を退屈させないお店でありました。

[LP] 雪村いづみ 「SUPER GENERATION」 アルファ ALFA1001 (1974)
[LP] Gabby Pahinui "THE GABBY PAHINUI HAWAIIAN BAND" Panini PS1007 (1975)
[LP] The Brute Force Steel Band, The Hell’s Gate Steel Band, The Big Shell Steel Band "STEEL BANDS OF ANTIGUA, B.W.I." Cook 1042 (1955)
[LP] The Mighty Sparrow "THE MIGHTY SPARROW SINGS TRUE LIFE STORIES OF PASSION, PEOPLE, POLITICS" Mace MCM10002 (1964)

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