またしても新作を聴くのは、最低気温がマイナスになった厳寒の季節。
なんで、いっつもピッツィカを聴くのは、この時季なんだろう。不思議な巡り合わせです。
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南イタリア、サレント半島を代表する古参ピッツィカ楽団、
カンツォニエレ・グレカーニコ・サレンティーノの新作。
今回はジャスティン・アダムスとのコラボだと聞いて、楽しみにしていました。
ジャスティンは、異文化アプローチする欧米人プロデューサーのなかで、
もっとも真摯で誠実な仕事をしている人と、ぼくが全幅の信頼を寄せる人です。
その信頼は今回も裏切られず、伝統楽器とプログラミングのバランスのとれた配置と、
双方がそれぞれを引き立て合っていることに、ジャスティンの手腕が示されています。
重く唸るシンセ・ベースに尖った響きのヴァイオリンが絡み、
男女の荒々しいコーラスが、土ぼこり舞う南イタリアの土壌を表わす1曲目から、
それは明らかでしょう。
フレーム・ドラムやタンブレロの響きに、ダブ的手法を加えてドローンを強調したり、
バグパイプのバックで、シンセ・ベースが脈打つようなラインを描いたりするあたりは、
ジャスティンが蓄積してきたノウハウの賜物でしょう。
場面場面に応じた慎重なサウンド・エフェクトが施して、サウンドを豊かにしつつも、
アンサンブル全体としては余計な音を重ねず、
削ぎ落とされているように聞こえるところが、スマートじゃないですか。
ブルックリンのバングラ・ブラス・バンド、
レッド・バラートをゲストに迎えた曲があるのには、
意表を突かれましたが、ここでも互いに容赦なくせめぎあっていて、
実に良い共演となっています。バングラ・ビートとピッツィカ、
相性バッチリじゃないですか。
この共演のアイディアも、ジャスティンだったのかなあ。
これまた、「伝統音楽の真髄を捉えた欧州現代人の表現の好例」であります。
南イタリアの土俗さをなんらそこなわず、
世界のリスナーに届く音響として作り上げたジャスティン、今回もいい仕事をしています。
CGS (Canzoniere Grecanico Salentino) "MERIDIANA" Ponderosa Music CD151 (2021)