シャバカ・ハッチングス率いるサンズ・オヴ・ケメットのメンバーとして頭角を現し、
ヌバイア・ガルシア、モーゼズ・ボイド、エズラ・コレクティヴとのコラボで、
ジャズ・シーンにチューバを前景化させてきたテオン・クロス。
<その他楽器>好きとしては、応援しないではいられない逸材ですが、
名刺代わりのデビュー作は、ぼくには物足りず。
でも、これほどの才能、慌てなくても、もっとスゴイ作品を作ってくれるはずと思ってたら、
はや2作目で、キちゃいましたねえ~。
アフロフューチャリズムを示唆するジャケットからして、攻めまくってるじゃないですか。
こういうのを期待してたんですよ。
テオンとドラマーのエムレ・ラマザノグルの二人によるプログラミングを主軸に、
ポエットのレミ・グレイヴズ、ジンバブウェ出身MCのシュンバ・マーサイ、
テオンが参加するスチーム・ダウンのリーダーでサックス奏者のアナンセ、
UKブラック・ラッパーのアフロノート・ズー、コンセンサスをゲストに迎えて、
制作しています。
スポークン・ワードやラップをフィーチャーしながら、
グライムとソカ、レゲエ、ダブを<ガンボ>した、
言うならば、ロンドン発のUKカリビアン・サウンド・システムでしょうか。
さまざまなアイディアが施された各曲は、トラックごと表情は異なるものの、
ファットなビートとウネるグルーヴのなかから、
肉感的なチューバのメロディが湧き出すところは、全曲共通。
亡き父へ贈った葬送曲‘Watching Over’ をのぞき、
サンズ・オヴ・ケメットの前任チューバ奏者、オーレン・マーシャルとの
チューバ・デュオでアルバムを締めたラスト・トラックまで、
アルバム全体を支配するサウンドのごっつさに、感じ入っちゃいました。
『内なる自己』というタイトルが示すとおり、
アフロ・ディアスポラを自覚するテオンが各曲に込めたテーマは、
内省的で思索的。しかし、祖先と対話するシャーマニズムを
現代性に満ちたサウンドのなかに展開することで、
その音楽をとびっきり開放的で、生命感に満ちたものにしています。
期待にたがわぬ新作ですけれど、
それでもまだまだ発展途上と思わせるところが頼もしい。
伸びしろの計り知れなさを予感させる本作、ますます目が離せない存在ですね。
Theon Cross "INTRA-I" New Soil NS0015CD (2021)