うわ~ん(大泣)。
ティナーシェの新作“333” がフィジカル化!
前作はとうとうフィジカルにならなかった、とばかり思いこんでいたら、
僅少プレスされてひっそりと出回ったことを後で知り、ホゾを噛んだんでした。
絶滅危惧種のCDラヴァーとしては、今度こそ取り逃してはなるまいぞと、
息を詰めてウォッチしていたんですが、アタリを逃さず、釣り上げました(悲願達成)。
今作は、ティナーシェの通算5枚目を数えるアルバムですけれど、
新世代ストリート・クイーンとして、世界的な成功を収めたあと、
メジャーを蹴ってインディに身を置くことになっての第2作ですね。
アンビエントR&Bに感じ入るようになったのは、ジェネイ・アイコからなので、
ぼくにとってはここ最近のことなんですけれど、
考えてみると、ティナーシェがデビューした10年代から、
すでにリヴァーブやエコーなどの空間系エフェクトをレイヤーしたサウンドが、
オルタナティヴなR&Bサウンドの主流になっていたんですね。
でも、その頃から比べてティナーシェも、すっかり大人びたよなあ。
キュートでセクシーなストリート・ダンサーといったイメージから、
キャリアに応じた軌道修正を図っていますよね。
そのヴォイスにも官能性が増して、ぐっとセンシュアルになりましたよ。
サウンド・プロダクションも、アンビンエントR&B一辺倒ではなく、
ボトムの利いたハウス・トラックあり、トラップあり、
懐かしいドラムンベースまであって、
ポップ・スターらしい彩り豊かなアルバムとなっています。
これまでのティナーシェのアルバムの作風どおり、
今作でもインタールードの曲を多く挿入していて、
作家性のある作品主義を貫いています。
ソングライターとしての気概の表れでしょう。
映画を鑑賞しているような物語性に引き込まれます。
ぼくは、メロウなスロウ・ジャムの‘Last Call’ に涙腺をヤられちゃいました。
思えばぼくが彼女に興味を持ったのは、「ティナーシェ」というその名前。
「神と共にある」を意味するショナ語だというので、へーえ、と思ったんですけど。
お父さんがジンバブウェのショナ人なんですね。
お母さんは北欧人だそうで、ティナーシェが生まれたのは、ケンタッキーのレキシントン。
ついでながら、今作のシングル曲‘Undo’ でフィーチャリングされている
ワックス・モチーフは、オーストラリア出身のDJですけど、
もろ東洋人な顔立ちなのは、父親が上海人で、母親が香港人だから。
本当に今のアメリカのエンタメを動かしている才能というのは、
多文化共生なんてキレイごとのお題目じゃなくって、
こういうマルチカルチュラルな人々なんだっていう現実を実感します。
Tinashe "333" Tinashe Music Inc. no number (2021)