寒い日々が続きますねえ。
「新しい日常」なんぞどこ吹く風で、
あいもかわらぬ、ウォーキング30分+電車50分の通勤生活を送っていますが、
さすがに雪が降ると、早足ウォーキングは足元不安となるので、事故が怖い。
この冬は、東京でもたびたび雪に見舞われているから、なおさらなんですけど、
家で仕事するのはまっぴらなので、「リモート・ワークお断り」を貫いているのです。
今日は家に帰ったら、何を聴こうかなあと考えるのが、
退社間際のルーティンというか、お楽しみですけれど、
寒い毎日にぴったりの、北欧もののいいアルバムと出会えたんですよ。
それがこのノルウェイのフォーク・シンガー、エリ・ストルベッケンの新作。
今回初めて知った人なんですが、ぼくより5つも年上で、
数々の受賞歴を誇るヴェテランなんですね。
父親のエギル・ストルベッケンはノルウェイの著名な音楽家で、
さまざまな民俗楽器を制作・演奏し、作曲活動のほか、
数多くの伝統歌を採集した研究家だったそうです。
親子二代でノルウェイを代表する伝統音楽家となったエリですが、
新作は、デンマークの二人の司祭トーマス・キンゴ(1634-1703)と
ハンス・アドルフ・ブロルソン(1694-1764)が書いた賛美歌を中心に、
古い宗教的な民謡を歌っています。
伴奏を務めるのが、フォーク系のミュージシャンでなく、
ジャズ・ミュージシャンというところが今回の目玉。
ノルウェイはフォークとジャズの相性が良くって、
ジャズのイディオムが素材を壊すことなく、
きちんと引き立てるメソッドをもっているんですね。
以前にも、ここでそんな好作を取り上げたことがあります。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2013-02-19
ピアノのアンドレアス・ウルヴォを中心に、
ベース、パーカッション、トランペット、フィドルの編成。
アンドレアスがアレンジやプロデュースにも携わり、キー・パーソンのようです。
アンドレアスは、たしか何回か来日してますよね。
エリの凛としたシンギングに、伴奏陣は努めてデリケイトなバックアップに徹しています。
インタールードに移っても、ピアノとトランペットが歌のメロディをなぞったり、
ピアノの分散和音を背景にフィドルがメロディを奏でるなど、
歌のパートと演奏のパートに温度差を作らないようにして、
純度の高いエリの音楽世界に寄り添い続けています。
パーカッションがドラム・キットのシンバル、スネア、タムを使っているようなんですけど、
キックの音が聞こえてこないので、アンサンブルとしてのリズムは作らず、
アクセントを加えることに終始しています。
フィドルは、まるでチェロのような響きを想起させる、悠然としたプレイを聞かせます。
聴いていると、古い賛美歌を題材としているのを忘れるほど現代性に溢れていて、
鳥のさえずりでアルバムを終える聴後感もいいですねえ。
デリカシーに富んだ、ノルウェイのフォーク・ジャズを堪能できるアルバムです。
Eli Storbekken "TIDLØSE TONER" Grappa HCD7378 (2021)