59年にアメリカへ渡ったブラジル人ギタリスト、
ボラ・セッチの未発表ライブ録音が出ました。
66年、67年、68年にシアトルのジャズ・クラブ、ペントハウスで録音された音源で、
ヴァーヴから出た66年のモントレー・ジャズ・フェスティヴァルの
ライヴ盤と同時期のもの。
ディスク1が66年12月1・8日、ディスク2が67年10月13・20日、
ディスク3が68年7月26日、8月2日の録音です。
メンバーもヴァーヴ盤と同じ、セバスチアン・ネトのベースと、
パウリーニョ・マガリャエスのドラムスなので、ヴァーヴ盤が好きな人なら、
手に入れておきたい3枚組でしょう。
ボラ・セッチは、62年11月のカーネギー・ホールでの歴史的コンサートにも
参加したギタリストとして有名ですね。ジャジーなタッチを得意としたギタリストで、
バーデン・パウエルの人気には及びませんが、
バーデンの神がかった鬼気迫るギター・プレイや、
クラシックのレパートリーが苦手なぼくは、ボラ・セッチの方が好みなのです。
ただ、バーデンとの共通点という意味では、
二人とも独自のサンバ・ギターの奏法を確立したことでしょうね。
どういうわけなんだか、バーデン・パウエルもボラ・セッチも、
ボサ・ノーヴァ・ギタリストという安直な紹介をされますけれど、
二人ともいわゆるボサ・ノーヴァとは異なったギター・スタイルを開発した人です。
その意味では、ルイス・ボンファだって、独自の個性のギタリストでしたよね。
ボサ・ノーヴァのレパートリーを弾いていれば、
なんでもボサ・ノーヴァ・ギターと呼んできたことは、
けっこう誤解を広げてきたと思うなあ。
アフロ・サンバ探究のなかで、バツカーダをギターに取り入れたバーデンとは、
また異なるアプローチでサンバ・ギターに取り組んだボラ・セッチですけれど、
そのボラのギターの魅力を堪能できる3枚組です。
40ページにおよぶライナーには、音楽評論家グレッグ・カズーズのほか、ラロ・シフリン、
ジョージ・ウィンストン、ジョン・フェイヒーが寄稿しているほか、カルロス・サンタナ、
ボラ・セッチの未亡人アン・セッチのインタヴューが掲載されています。
Bola Sete "SAMBA IN SEATTLE" Tompkins Square TSQ5852