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アガデスの「アイルの星」 エトラン・ド・ルアイル

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Etran De L’Aïr  AGADEZ.jpg

ニジェールのアガデスは、サハラ交易の拡大によって、
14世紀にトゥアレグの隊商が駐留する都市として栄え、
トンブクトゥからの往来に加えて、カノからハウサ商人が北上するなど、
多様な民族の交差点となりました。

しかし、1500年頃ソンガイ帝国に征服され、
のちにモロッコからの侵略によって町は荒廃し、人口は激減します。
19世紀になるとフランスの植民地下におかれ、
ニジェールとして独立すると90年代にはトゥアレグ反乱の重要拠点となり、
数多くのトゥアレグのギター・バンドが生まれました。

そんな征服と侵略の歴史があるアガデスをタイトルに掲げた
エトラン・ド・ルアイルの新作が出ました。
ニジェール北部の山岳地帯アイルの名を取って、
「アイルの星」と名乗ったグループは、アガデスのシンボルである
グランド・モスクのすぐそばの小さな町、アバラネで生まれ育った
兄弟と従兄弟によって、95年に結成されたファミリー・グループです。

エトラン・ド・ルアイルは、高価なミュージシャンを雇えない
労働者階級の結婚式に引っ張りだこの、
地元の下層階級の冠婚葬祭になくてはならないグループで
すでに四半世紀の活動歴を持っています。

Etran De L’Aïr  NO.1.jpg

そんな彼らのカジュアルな姿をドキュメントしたアルバムが、
18年にサヘル・サウンズから出たんですけれど、音質がヒドすぎて閉口しました。
アガデス郊外にある彼らの屋敷の外でライヴ録音したもので、
手拍子やウルレーションが飛び交うナマナマしさが、
雨季の終わりのアガデスの濃密な夜を、想像させはするんですけれどねえ。

なので、今回のスタジオ録音こそが、彼らの本領を発揮させたものといえそうです。
ニジェールのトゥアレグ人バンドというと、
ボンビーノしかり、エムドゥ・モクタールしかり、ケル・アスーフしかり、
みなこぞってロック寄りのサウンドを聞かせていますけれど、
エトラン・ド・ルアイルは地元に根差したサウンドで、
祝祭のダンス・ビート、タカンバを聞かせてくれます。

ロックぽいデザート・ブルースに耳慣れた人には、
キャッチーさに欠け、単調に思えるかもしれませんが、
これこそが、アガデスのワーキング・クラスの祝祭の場を彩る、またとないサウンド。
ジャケットの華やかな色使いのコラージュを施したデザインのなかに、
アガデスのシンボルであるグランド・モスクのミナレット(塔)が、
ひときわ存在感を醸し出しています。

Etran De L’Aïr "AGADEZ" Sahel Sounds SS068 (2022)
Etran De L’Aïr "NO.1" Sahel Sounds SS045 (2018)

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