木琴のころころとした音色が好きです。
アフリカのバラフォンやインドネシアのジェゴグのような、
倍音たっぷり、強烈なノイズを巻き起こすド迫力の木琴も大好きですけれど、
マリンバをもっと素朴にしたような木琴の響きは、
どこかトイ・ピアノに通じる愛らしさがあります。
そんな木琴ファンの心をくすぐるアルバムと出会いました。
それがこのミャンマーの木琴、パッタラーの演奏集。
セイン・ムーターなどの諸作で知られるミャンマーの古典音楽専門レーベル、
イースタン・カントリー・プロダクションからリリースされたアルバムです。
ジャケット写真で主役のチョー・ミョ・ナインがパッタラーを演奏していますが、
鍵盤が竹ではなく金属製なのは、どういうわけなんでしょう。
英文タイトルにも「シロフォン」とあるとおり、
演奏されているのは鉄琴ではなく、竹の木琴パッタラーです。
木琴、太鼓、笛、小シンバルの4人という小編成による室内楽的な演奏は、
スンダのガムラン・ドゥグンにも通じる、静謐で穏やかな音色を響かせ、
場の空気を清めてくれます。
ミャンマー独特の音階に調律されたパッタラーが、
自在に伸び縮みするリズムに乗せて演奏されると、
十二平均律と均等拍に慣れた者には、あまりに異質で、眩暈がしてきますね。
でも、フレーズの終わりにテンポが遅くなるところは、
序破急の感覚を持つ日本人には馴染みも感じられます。
こういう<緩急をつける>リズム感は、
東アジアの水田稲作農耕から生まれたものなんじゃないかと想像します。
木琴の形状は、タイのラナートと同じ舟形の共鳴箱をしていて、
楽器編成もタイ古典音楽のピーパートとまったく同じという、
どちらもクメール宮廷音楽の流れを汲むものでありながら、
タイとはまったく雰囲気が異なるのが、面白いんですよ。
違いは、やはりメロディでしょうか。
タイの古典音楽を聴いてると、退屈で眠くなっちゃうことが多いんですけれど、
ミャンマーの古典音楽は、メロディに沿って拍の長さまで変わる、
謎めくフレーズがしょっちゅう現れるものだから、退屈してる間がありません。
ガムラン・ドゥグンほどクールだったり、神秘的なところはなく、
素朴な温かみが伝わってくる演奏に、ミャンマーの良さを感じます。
読書の秋に、BGMの良き相棒となってくれそうな1枚、
ぼんやりしたい時などにも、格好のアルバムですね。
Kyaw Myo Naing "MYANMAR XYLOPHONE TUNES" Eastern Country Production no number