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並外れた音楽家としてのスケールの大きさ リシャール・ボナ

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Richard Bona & Mandekan Cubano.jpg

リシャール・ボナの最高傑作“BONAFIED” から3年、新作はラテンです。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30

ルイ・ヴェガのプロデュースで一躍有名になった、
カラカス出身のトップ・パーカッショニスト、ルイシート・キンテーロに、
その従弟であるロベルト・キンテーロ、そしてピアニストのオスマニー・パレデスに、
ドラマーのルドウィッグ・アフォンソという、
二人のキューバ出身の俊才を擁するマンデカン・クバーノは、
ニューヨークのラテン・ジャズ/サルサ・シーンの腕利きプレイヤーを集めたユニット。
すでに4年前にこのユニットで来日していますけれど、アルバムは初ですね。

これまでのアルバムでも、ボナはラテン/サルサ調の曲をやっていたので、
異種格闘技的なところなどまったくなく、
いつもどおりドゥアラ語で歌うボナのまろやかな歌も、しっくりとなじんでいます。
腕っこきのトップ・プレイヤーが奏でるトゥンバオが、
キューバン・サルサになるのでもなければ、ソンになるのでもない、
ラテンのフォーマットを借りながら、そのスタイルを超えた音楽に仕上がるのは、
毎度のことながら、ボナの音楽家としての器の大きさに感じ入ります。

ラテンを基調とした表現を借りつつ、どこまでも柔和なボナの音楽の表情はいつもと変わらず、
アフリカ、カリブ、アメリカ、ヨーロッパを往来したトランスアトランティックの旅を経て、
ますます音楽性が懐の深いものに積み上げられてきましたね。
ライヴでもおなじみのサンプラーを使ったループによるヴォイス多重表現では、
母語のドゥアラ語で歌うことにこだわる、ボナの音の響きに対する繊細な感性が表われています。

以前、ボナにインタヴューした時に印象的だったのが、彼のベース訓練法。
ボナが片時もベースを放さず訓練する「ベースの虫」であることは知っていましたけど、
旅先で聴く鳥の鳴き声、渋滞のクラクションの音といった自然/人工音や、
異国で耳にした人の会話を録音して、
その音をベースで再現するというユニークな訓練法には驚かされました。

ちなみにボナは「練習」ではなく、「訓練」というんですね。
スケールの運指練習なんて退屈なことをいくらしても、音楽の訓練にはならない、
新しいアイディアなんか生まれないと、ボナは言います。
自然音や人の会話までもメロディ化するというトレーニングは、チャレンジングです。

「だからこそ新しいアイディアが生まれるんだ。どうすれば弾けるだろうかってね。
出来るまで弾き続けるんだ。楽しくってしょうがないよ。
単調でつまらない練習をいくらしたって、新しいテクニックなんて生み出せないよ。
そんな苦労は、意味ないんだ」

日本の女子高生の会話は、リズムに溢れてる!と強調していたボナ。
音楽をクリエイトすることについての考え方が、もう並外れていて、
音楽家としてのスケールの大きさに、あらためてぼくは敬意の念を持ちました。

繊細にして大胆。
共演者の出す音に即応して、場面をがらりと転化するジャズ・ミュージシャンとしての才気は、
やはり天才という言葉がふさわしく、マンデカン・クバーノを率いても、
そこから生み出されるのは、ボナ・ミュージックそのものです。

Richard Bona & Mandekan Cubano "HERITAGE" Qwest 234245 (2016)

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