時代は20世紀初めの頃でしょうか。
ブラジルの街角のダンスホールを描いたジャケットに一目惚れ。
ヤマンドゥ・コスタの新作と知って、即レジに持っていきました。
ヤマンドゥ・コスタの地元、ブラジル南部のパッソ・フンドで、
少年時代からの音楽仲間だったというベーシスト、グート・ヴィルチとのデュオ作です。
二人の自作曲のほか、ジャコー・ド・バンドリン、ルピシニオ・ロドリゲス、ヴィラ・ロボスといった
先人のショーロ曲のほか、ジャンゴ・ラインハルトやコロンビアのクラシック・ギタリスト、
ヘンティル・モンターニャの曲を取り上げて、演奏しています。
ショーロだけでなく、タンゴ、ミロンガ、チャマメなど、ジャケットどおり、
20世紀はじめの社交場で踊られていたダンス曲をテーマとしているようです。
ヤマンドゥのギターはすっかり円熟して、超絶技巧もギラギラしたところがなくなりましたね。
優雅な楽想のなかで、ここぞというところに、さらりと見せ場を作るようになって、
昔のような、これでもかといったテクニックの応酬が減りました。
それでも、ネックを幅広に使ったスライドを披露して、大きくヴィブラートをかけるところなんて、
ヤマンドゥのドヤ顔が見えるようですけれど。
音のヴォリューム、タッチの違いによる音色の使い分けなど、
自在な表現力を聞かせるヤマンドゥのギターは、いままさに脂がのっているという感じ。
グート・ヴィルチは、所々でソロも弾くものの、おおむねヤマンドゥのバックに専念しています。
グートが弾くベースはコントラバスではなく、
ギター型のベース、アクースティック・ベース・ギターなんですね。
イントロで弓弾きしている曲もあって、これはコントラバスを弾いているんだと思いますが。
二人の自作曲も古風なメロディ使いになっていますけれど、
ヴィラ・ロボスの「スコティッシュ・ショーロ」の優雅さは、やはりずば抜けています。
ヨーロッパの舞踏音楽とアフリカのリズムが、
ブラジルで結婚した最良のサンプルが、ここにあります。
Yamandu Costa & Guto Wirtti "BAILONGO" Funarte 5.071.096 (2014)