どういう風の吹き回しか、魔が差した(?)のか、わかりませんが、
生まれて初めてアンビエントのコーナーでCDを買いました。
DJまほうつかいという、本職は漫画家である西島大介の作品。
この人の漫画を読んだことはないんですけれど、
どこかで見たことがあるようなイラストに目が留まって、手に取ってみたら、
西島氏の直筆ドローイングが入ってたんですね。
そのドローイングに惹かれて、聴いてみたくなったんでした。
試聴してみると、ピアノ・ソロのアルバムで、
冒頭の即興曲の無為な表情に引き込まれました。
メロディがあるような、ないような、モチーフをそのままフレーズにして紡がれる曲。
手探りで鍵盤を押さえていくような演奏は、幼児が初めて音の出る楽器に接して、
驚き楽しむ無邪気さと共通するところがあります。
こういう無為な音楽を成立させるのって、とても難しいと思うんですよ。
ピアノの上達とともに、こういう素朴な音列を弾いて楽しむことを、人は忘れがちだし、
達者な演奏家が、あえてこういう「ヘタウマ」な音楽をやると、
作為のいやらしさがどうしてもつきまといます。
上手く弾きたいとか、きれいに弾きたいとか、人を感動させたいとか、
そういった雑念を取り払って、音を出すことそのものに没入するのは、
そうたやすいことではありませんよね。
キース・ジャレットに代表される、ナルシシズムの塊みたいな自己陶酔型のピアノは
虫唾が走る性分なので、現代音楽だろうが、アンビエントだろうが、フリー・ジャズだろうが、
こういう音楽はほとんど受け付けられないんですけれど、
この人のピアノを抵抗なく聴けたのは、無為の音楽に徹していたからだと思います。
乾いた叙情の伝わる曲や、愛らしさやせつなさがまじりあった曲も、
しみじみとしていいですね。
全編、無為の音楽に透徹された演奏かといえば、
3曲目の後半や6曲目の一部に、自意識が立つような場面もないじゃないですけど、
ぼくは、この人の演奏、とても気に入りました。
DJまほうつかい(西島大介) 「LAST SUMMER」 ウェザー[ヘッズ] HEADS207 (2015)
西島大介直筆ドローイング