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センバを背骨にしたアフロ・ポルトゲーズ・クレオール・ミュージック ユリ・ダ・クーニャ

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Yuri Da Cunha  O Intérprete.jpg

やあ~っと、手に入りました。
アンゴラの若手センバ歌手ユリ・ダ・クーニャの15年新作。
たくもー、なんでこんなにアンゴラものは流通悪いのかなあ。
ポルトガル盤であれ、アンゴラ盤であれ、フィジカルがまったく出回ってないんですよね。
新作すらハード・トゥ・ファインドという状況なんだから、やんなっちゃいますよ。
これじゃあ、アンゴラ音楽の盛り上がりが世間に伝わらないのも、無理ないよなあ。

08年作の“KUMA KWA KIÉ” と12年作の“CANTA ARTUR NUNES” にカンゲキしたのが、
ちょうど1年前。その時からずっと探していた15年新作だったわけですが、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2016-03-21
期待にたがわぬ出来で、待ったかいがあったというもの(待ちたかないけど)。
あぁ、2016ベスト・アルバムに間に合わなかったのが、なんともシャクであります。

センバがアフロ・ポルトガル系クレオール・ミュージックとして進化した姿をくっきりと打ち出していて、
その仕上がりは、エディ・トゥッサの最新作と同等のクオリティ。
先人のセンバに対する敬愛の念は、エディ以上に強いものがあり、
往年のセンバ歌手アルトゥール・ヌネスのカヴァー・アルバムを出したユリらしく、
今回は伝説のンゴラ・リトモスの曲を、オープニングに取り上げています。

ギターとパーカッションの伴奏によるその曲“Bong'omona” は、
伝承歌をモチーフにしたとおぼしき曲で、
カーニバル・ソングのような快活さが、めっちゃチャーミング。
半世紀以上も昔のアンゴラを思わせる曲をオープニングにもってくるところで、
はやグッときちゃいましたよ。

センバでのみずみずしい歌いっぷり、
クレオール・ポップたるキゾンバで聞かせるシャープな切れ味も、
華のあるポップ・スターそのものですよね。
センバとメレンゲとルンバがひとつの曲の中で同居した“Celina” など、
アンゴラならではのクレオールの音楽性を発揮したサウンドにも圧倒されますよ。

さらに今作では、カーボ・ヴェルデ音楽との邂逅も聴きもののひとつとなっていて、
前のめりにつんのめるようなカーボ・ヴェルデのダンス音楽フナナーを鮮やかにキメているほか、
アルバム・ラストは、優雅なヴァイオリンの響きも麗しい歌曲モルナで締めくくっています。
ボーナス・トラックとクレジットされたこのモルナは、なんとトー・アルヴィスの共作。
トー・アルヴィスは、カーボ・ヴェルデの知られざる才人で、
06年にリリースした自主制作盤は、カーボ・ヴェルデ音楽屈指の名盤です。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-04-26

『アフリカン・ポップス! 文化人類学からみる魅惑の音楽世界』(明石書店 2015)で、
「カーボ・ヴェルデのクレオール音楽」の章を書かれた青木敬氏が、
本作を推薦ディスクに取り上げているのを見た時は、我が意を得たりと思ったものです。

昨年の『ミュージック・マガジン』9月号で紹介したエディ・トゥッサの新作が、
同誌のワールド・ミュージック年間ベスト10入りの栄冠に輝いたイキオイを借りて、
今年はぜひユリ・ダ・クーニャをごひいきに、よろしくお願いいたします。

Yuri Da Cunha "O INTÉRPRETE" LS Republicano no number (2015)

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