前回のショーロ・セッションの記事で触れた
サックス/フルート奏者エドゥアルド・ネヴィスのソロ作です。
買った当初に、「うわぁー、これ、いい!」と思わせるような
引きの強さがあるわけではないので、記事に書かなかったものの、
妙に胸に残って、繰り返し聴きたくなるアルバムなんですね、これが。
普段使いのつもりで買ったセーターが、
とても身体になじんで、すっかりお気に入りになったみたいな。
じわじわとその良さに惹き込まれる、スルメ盤であります。
いちおう、ジャズのアルバム、といっていいんだと思うんですよ。
なんですけど、ジャズにしては、あまりにも歌ごころ溢れんばかりなのは、
北米とも欧州とも違う、ブラジルのジャズならではといえます。
もちろんその訳が、ショーロの伝統を引き継いでいるからなのは、言うまでもありません。
1曲目から妖しいオリエンタルなメロディをラテンのニュアンスで、
不思議なアラボ=ラテンな曲を演奏するかと思えば、
2曲目もドラムスが叩くリズムはジャズのセンスですけれど、
主役のフルートの吹奏は、ジャズというよりショーロのセンス。
でも、これがショーロのアルバムかといえば、ジャズ・マナーの演奏も多く、やっぱり
「ジャズのアルバム、といっていいんだと思う」のふりだしに戻る、なんですね。
ブラジルには、こういうインストゥルメンタルのアルバムが多いですよね。
BGMにするには、あまりに聴きどころありすぎな、エスプリの効いた演奏集。
なんせ、ブラジルのレコード創世記は、歌ものよりインスト演奏の方が多かったんだもんねえ。
ジャズより歴史の古い、ブラジルのインストゥルメンタル音楽の奥行きの深さを感じます。
ぼくのごひいきのハーモニカ奏者ガブリエル・グロッシも1曲参加、
クラリネットのルイ・アルヴィン、トランペットのアキレス・ジ・モライスのプレイも
耳をそばだてられます。ルイのクライネットには泣かされました。いいね、この人。
ゲストの女性歌手が歌うトラックもすがすがしく、
静謐なメロディに立ち上るエドゥアルドのエモーショナルなサックス・ソロが際立ちます。
ジャズでもなければショーロでもない。
親しみやすいインストゥルメンタル音楽に仕上がっているところが、ぼく好みです。
Eduardo Neves "EQUADOR" Tenda Da Raposa TDR001 (2012)