なつかしいバラフォンの響きに、30年前へタイム・スリップするような感覚を覚えました。
S・K・カクラバとクレジットされた、ガーナ、ロビ人バラフォン奏者のソロ・アルバム。
その名前から察せられる通り、カクラバ・ロビの甥っ子だそうです。
といっても、今ではカクラバ・ロビを知らない人も多いかもしれませんね。
バラフォンの強烈なサウンドを、初めて日本人に教えたのがカクラバ・ロビでした。
初来日した83年暮れのソロ・コンサートは、いまでも忘れられません。
ピアニストの一柳慧と打楽器奏者の高田みどりが出演する、
現代音楽のコンサートという企画で招聘されたのでした。
会場の西武美術館は、スノッブな雰囲気が違和感ありありで、
アフリカの民俗音楽を<鑑賞する>、居心地の悪いものでしたけれど、
いざコンサートが始まってみると、バラフォンのサウンドに観客はドギモを抜かれ、
アフリカ音楽の凄みを思い知らされたのでした。
そのころぼくは、マンデのバラフォンを持っていたんですが、
こんなノイジーな音は出なかったんだよなあ。
マンデのバラフォンは、共鳴器のひょうたんがロビのよりは小ぶりで、
鍵盤もロビのは平べったいのに、マンデのは大ぶりのカツオ節ぐらいの太さがあり、
ノイズ成分の少ないコロコロとした音色の、木琴らしいサウンドをしていました。
参考までに、マンデのバラフォンは、亡くなったケレティギ・ジャバテのソロ作
“SANDIYA” のジャケットに写っているので、載せておきましょう。
当時カクラバ・ロビのソロ・アルバム“XYLOPHONE PLAYER FROM GHANA” や、
ロビ人の葬儀をフィールド録音したオコラ盤を聴いていたので、
自分が持っているマンデのバラフォンと音色が違うことを知っていたとはいえ、
じっさいに体験するバラフォンの響きには、ビックリでした。
びーーん、びーーんと鳴る、木琴とは思えないような金属的な響き。
鍵盤の下にぶら下がる、共鳴器のひょうたんに開けられた穴をふさぐクモの巣が、
ブーブー紙と同じ効果をもたらして、強烈なノイズを撒き散らします。
カクラバ・ロビを聴いてからというもの、シビれるような倍音の出るバラフォンに憧れ、
どうしてももう1台バラフォンが欲しくなり、その後ロビではなく、
ネバ・ソロが弾くのと同じ、セヌフォのバラフォンを手に入れました。
カクラバ・ロビが演奏するバラフォン(コギリ)より鍵盤の数が多く、大型のものです。
これまた参考まで、ネバ・ソロのジャケットをのせておきましょう。
振り返ると、就職して結婚するまでの20代の間って、
ボーナスをもらうたびに、アフリカの楽器や仮面に散財してたなあ。
その後カクラバ・ロビは、ちょくちょく日本にやって来るようになり、
こちらも何度か観るうち、さすがに新味も薄れた感はありましたけれど、
マレットの反対側で鍵盤をグリッサンドするテクニックなど、
カクラバ・ロビ直伝のプレイを聞かせるS・K・カクラバのアルバムには、頬がゆるみました。
ロビの人たちがバラフォンを演奏するのは、葬儀が主ですけれど、
本作にも伝統的なロビの葬儀の曲が多く演奏されています。
ロビの葬儀でのバラフォン演奏といえば、LP時代にオコラ盤を愛聴したものですけれど、
CD時代になってオコラが再度フィールド録音した
“PAYS LOBI - XYLOPHONE DE FUNERAILLES” は、音も良く臨場感に溢れ、
S・K・カクラバを気に入った人にはオススメです。
そういえば、カクラバ・ロビの息子のテンソ・カクラバが、
日本に住んでいたはずなんだけど、今はどうしているんだろう。
SK Kakraba "SONGS OF PAAPIEYE" Awesome Tapes From Africa ATFA018 (2015)
[LP] Kakraba Lobi "XYLOPHONE PLAYER FROM GHANA" Tangent TGS130 (1978)
Kélétigui Diabaté "SANDIYA" Contre-Jour CJ012 (2004)
Neba Solo "KÉNÉDOUGOU FOLY" Mali K7 no number (2000)
Neba Solo "KENE BALAFONS" Cobalt 09295-2 (2000)
Palé Tioionté, Hien Bihoulèté, Kambiré Tiaporté and Da Gboro Alé "BURKINA FASO : PAYS LOBI - XYLOPHONE DE FUNERAILLES" Ocora C560148 (1999)