アンゴラのポップスの充実ぶりを象徴するアルバムですね。
ネロ・カルヴァーリョの12年ヒット作と、その続編として出された15年作。
ネロ・カルヴァーリョは、59年ルアンダ生まれのシンガー。
南部ナミベ州の町トンブアに2年ほど暮らしていた時、
少年グループのミニ・ジョーヴェンスに15歳で参加したのが、音楽活動のスタート。
75年にポルトガルのポルティマンへ移住すると、友達のシコ・レイテと一緒に、
当時ポルトガルで人気絶頂だったアンゴラ人コンビのフォーク・デュオ、
ドゥオ・オウロ・ネグロを真似して活動したそうです。
78年にアンゴラ人バンドのアフリカ・テンタソーンに参加して、
79年と80年のアルバムに録音を残したのが、ネロの初録音となったようです。
アフリカ・テンタソーンは、ポルトガルで活動していたバンドですが、
ブダ、アナログ・アフリカ、iPlayなど、数あるアンゴラの編集盤では、
ことごとく無視されて選曲されていません。
それもそのはず、ネロが参加した2作を聞けば、場末のハコバン並みのサウンドで、
B級以下の実力であることは歴然。
その後、81年に憧れのドゥオ・オウロ・ネグロの伴奏グループの一員に起用され、
85年にドゥオ・オウロ・ネグロのミロ・マクマホンが亡くなったあとも、
相棒のラウル・インディプウォとともに活動を続け、世界各国をツアーしています。
そして92年からソロ活動を始め、99年のライヴ盤がソロ・デビュー作となりました。
3作目にあたる12年作は大ヒットとなり、数々の賞を受賞しましたが、
それも納得のハイ・クオリティのアダルト向けポップスに仕上がっているんですね。
アフリカ、ラテン、フレンチ・カリブ、大西洋のさまざまなクレオール・ミュージックの
いいとこどりをしたサウンドにのせて歌う、ソフトでダンディなネロのヴォーカルに酔えます。
ためしに、“ENCONTROS” の各曲を書きだしてみましょうか。
1曲目はストリングス・アンサンブルが加わった麗しいボレーロ、
2曲目はカッサヴのジャコブ・デスヴァリューがプロデュース・アレンジしたズーク、
3曲目はカーボ・ヴェルデのキム・アルヴィス作の泣きのモルナ、
4曲目はディカンザのリズムをカクシ味にして、
一部ルンバも取り入れたたポップなアレンジのセンバ、
5曲目はジャジーなスロー、
6曲目はホーン・セクションにアコーディオンをフィーチャーした本格的なメレンゲで、
ブリッジがザイコ・ランガ=ランガばりのルンバ・コンゴレーズにスイッチするアレンジ、
7曲目はトレスの響きも印象的なボレーロに始まり、
ヴァイオリン・セクションが加わってチャチャチャにスイッチするアレンジ、
8曲目はカーボ・ヴェルデの歌手ティト・パリス作で本人も参加したコラデイラ、
9曲目はアコーディオンをフィーチャーしたセンバ、
10曲目は「ライ、ライ、ライ、ロ、ライ~♪」のハミングがジプシー・キングスばりのルンバ・フラメンカ、
11曲目はギネア=ビサウの俊才マネーカス・コスタがアレンジした、
センバとグンベーのリズムが交互する曲、
12曲目はアンゴラ人好みのラメント的なスロー・バラード、
13曲目はゲストの男女シンガーの歌とラップをフィーチャーしたファンク・ナンバー、
14曲目はヴァルデマール・バストスとデュエットしたセンチメンタルなスロー・バラード、
15曲目はキューバ、ハバナで録音したラテン・ポップス。
全15曲78分超の長さをまったく感じさせない、多彩なプロダクションとカラフルな楽曲に、
アンゴラのポップスの成熟ぶりがくっきりと示された傑作ですね。
アフリカ・テンタソーン時代のお粗末さとは、隔世の感がありますよ。
続編となった15年作“REENCONTROS” も、姉妹盤といえる極上の仕上がりです。
ゲストに母国の大物ボンガに、カーボ・ヴェルデのトー・アルヴィス、
グアドループの歌姫タニヤ・サン=ヴァルというゲストも嬉しい、
遅咲きのシンガー、ネロ・カルヴァーリョの傑作2編です。
Nelo Carvalho "ENCONTROS" Mimbu no number (2012)
Nelo Carvalho "REENCONTROS" Mimbu no number (2015)
África Tentação "ANGOLA 79" Sons D’África CD459/04 (1979)
África Tentação "MULHER DE ANGOLA" Sons D’África CD19/06 (1980)