コロンビア大学で博士号取得をした、アルト・サックス奏者のスティーヴ・リーマン。
超知性派フリー・ジャズの人、というくらいのことしか知らなかったんですが、
セネガル、ダカールのアンダーグラウンドなヒップホップ・シーンで活動する
ラッパーをフィーチャーしているという新作を聴いてみて、ビックリ。
こんな面白いジャズをやってた人だったのか。
ヒップホップのビートとジャズを、
「融合」というより「ぶつけ合った」といった印象の本作。
グループ名とタイトルに付けた「交差点」というウォロフ語が意図する通り、
アメリカ人ラッパー、セネガル人ラッパー、アメリカ人サックス奏者の3者が、
国籍やジャンルを越えたガチンコMCバトルを繰り広げています。
グラスパー一派のヒップホップとジャズのアプローチが、
ちっとも面白く聞こえないぼくにも、これは面白く、新鮮でしたね。
スティーヴのサックスのブロウと、ラッパーのフロウが同等に絡んでいて、
ラップをフィーチャーするとか、バックトラックとソロイストといった関係でなく、
スリリングなMCバトルをしているのは、まさにヒップホップのフリースタイルであり、
フリー・ジャズのインプロヴィゼーションでしょう。
リズム・アプローチも多彩で、スティーヴ・コールマンのファイヴ・エレメンツを
グレード・アップしたようなアンサンブルは、すごく刺激的です。
ただ、全面的にかっこいい!とハシャゲないのは、
エレクトロを駆使して作り込んだサウンドが、ウザいと感じる場面も多いから。
ソプラノ・サックス奏者作の陰鬱な曲も、ちょっとウンザリだなあ。
やっぱ、この人、アタマ良すぎるのが災いしてるような。
むしろ、前作のオクテット編成の方が、ぼくは好みでした。
作曲と即興を緻密に織り上げた作品で、
スティーヴのブロウにタイショーン・ソーリーのドラムスがぴたりと合わせていったり、
いわゆるジャズ的快感に満ち溢れていて、かっくいい~♪
スティーヴのアルトの太い音色もいいよなあ。
なんだかエリック・ドルフィーの生まれ変わりを見るようで、ホレボレとしちゃいましたよ。
いや、これ、2014年のジャズの大傑作じゃないですか。
もっと前に聴いてれば、ぜったい年間ベストだったのになあ。
Steve Lehman & Sélébéyone "SÉLÉBÉYONE" Pi Recordings no number (2016)
Steve Lehman Octet "MISE EN ABÎME" Pi Recordings no number (2014)