ロナルド・チュールと一緒に届いたのが、
グアドループのアコーディオン弾き、ナルシス・ブカールのアルバム。
この人の99年のデブス盤を持っていたので、おや、ひさしぶりと思ったんでした。
デブス盤は伝統的なカドリーユ・アルバムでしたけれど、
ギターやスティールパン、キーボード、バンジョーを効果的に使っていて、
30分程度という小品ながら、なかなか聞かせるアルバムに仕上がっているんですよ。
カドリーユのような伝統音楽は、なかなかCDにならないので、
新作が出るというのは珍しいですね。自主制作かもしれませんが。
グランド=テール島南部の町ココワイエに生まれた
ナルシス・ブカールは、子供の頃から音楽好きで、
ギターを覚えて、わずか5歳で地元の楽団に加わっていたんだとか。
お兄さんがアコーディオンを弾いていた影響で、
その後アコーディオン奏者になったんだそうです。
新作ライナーには、60年に撮影された3人の少年の白黒写真が載っていて、
アコーディオンを抱えた幼いナルシスが、二人の甥っ子と一緒に並んで写っています。
甥っ子二人は、一人は竹製打楽器のシヤックを、もう一人はギターを持っています。
その新作は、カドリーユを中心としながら、ビギンやコンパもやっていて楽しい限り。
田舎のカドリーユ楽団といった風情ながら、カクシ味に打ち込みをさりげなく使っていて、
ポップスとして制作している姿勢は、プロの仕事ですね。
伝統音楽のレコーディングは、きちんとプロデュースしないと、
アマチュアみたいなシマリのないものになりかねないところがあるので、
ポップに親しみやすく作られた本作は、その意味でも成功した秀作といえます。
Narcisse Boucard "LE DÉLIRE DE NARCISSE" no label NB001 (2015)
Narcisse Boucard "QUADRILLE TRADITION" Debs 2502-2 (1999)