クラブ・ジャズのセンスを、ジャズの即興演奏の中に生かせる才人。
前作“CHURCH” を聴いて、マーク・ド・クライヴ=ロウをそう認識したのは、
間違いじゃなかったですね。
インプロヴァイザーであり、プロデューサーであるという資質を
鮮やかに示して見せたのが前作とすれば、
新作ライヴは、ジャズ・プロパーであることを明らかにして、
インプロヴァイザーの才能を発揮した快作となりました。
マーク・ド・クライヴ=ロウは、
ウエスト・ロンドンのブロークン・ビーツのパイオニアという触れ込みだったので、
前作で初めてこの人を聞いた時は、ちょっとびっくりしたんですよ。
豊富な音楽のボキャブラリーは、クラブ・ジャズで鍛えられたからでしょうけれど、
単なるビートメイカーとして機能させた音楽ではなく、生演奏の比重が高いというより、
全編、生演奏そのもの。エレクトロだって即興してるんだから、
これをジャズと呼ばずに何といおうって感じ。
これまでにも、ジャジー・ヒップホップ界隈で、
打ち込みの上物として生演奏をするなんてのはよくありましたけれど、
あれって、やっぱり発想はフュージョン的というか、
ジャズの即興とは別種のサウンド・クリエイティヴィティですよね。
だからクラブ・ジャズって、ジャズとは名ばかりの本質はフュージョンで、
イージー・リスニングとも親和性のあるダンス・ミュージックだと思ってます。
ところが、“CHURCH” でマークが示したのは、
そんな上モノと打ち込みの関係ではなく、
その場でサンプリングやループをして、演奏者とともに即興するという、
まさしく新世代のジャズとなっていたのでした。
そして、新作は管一人のカルテット編成で、マークはピアノ、キーボード、
ライヴ・エレクトロニクスとクレジットされています。
なんとサン・ラとアーマッド・ジャマルのカヴァーもやっていて、
これがまた聴きものなんですが、
惜しむらくは収録時間わずか28分弱と、やたら短いこと。EPか。
特にラストのアーマッド・ジャマルの“Swahililand” は、
演奏がグルーヴし始める3分すぎで、あえなくフェイド・アウト。
えぇ~! なんでここで終わるの!!
信じらんない、すっごくいい感じで始まったばかりなのに!!!
完奏を収録しないとは、許せん。来日してこの続きを聞かせてください~。
Mark De Clive-Lowe "LIVE AT THE BLUE WHALE" Mashibeats/Ropeadope MB004 (2017)
Mark De Clive-Lowe "CHURCH" Mashibeats/Ropeadope MB001 (2014)