アンゴラ、いいぞ、アンゴラ。
世の中のトレンドとはまるで無関係に、今年はずっとアンゴラのポップスに夢中になっています。
だって、欧米のメディアに一度ものったことのない初耳の歌手で、
魅力的な人がいっぱいいるんだもん。
むしろこれまで欧米を通じて紹介されてきたワルデマール・バストスだとか、
マリオ・ルイ・シルヴァの魅力のなさを思うと、欧米人って耳が無いというか、
センスが悪いとしか言いようがありません。
これじゃ世の中の人が、アンゴラのポップスに注目するわけがありませんって。
いい音楽は、自分の耳を頼りに探し続けなきゃ、見つかりませんね、やっぱ。
手に入りやすいCDばっかり聴いてたって、いい音楽には巡り合えません。
で、ここのところ、すっかりマイっているのが、エルヴィオという男性シンガー。
苦み走った声で、やるせないセンバを歌う人で、これがねぇ、胸にグッとくるんですよ。
めちゃくちゃ泣ける曲が、ずらっと並んでいるんですけれど、
作曲者を見ると、アンゴラを代表するソングライターのパウロ・フローレスに加え、
シロ・ベルチーニといった人の曲を多く取り上げています。
これが、ホントにいい曲ばっかりなんですよぉ。
エルヴィオが歌うアフリカン・サウダージとしか言いようのない独特の哀感は、
カーボ・ヴェルデやブラジルなど、旧ポルトガル植民地に共通する味わいがありますね。
物悲しいのに優雅さがあって、去りゆく夏の寂寥感のような郷愁が胸に迫ります。
さらにそうしたメロウネス溢れるメロディを、アクースティック主体のサウンド・プロダクションに
洗練されたアレンジで、鮮やかに彩りながら聞かせてくれるんだから、たまりません。
主役のエルヴィオについて調べてみると、アンゴラ西部の州都で港町のベンゲラ出身の人。
95年からヒップホップやズーク・ラヴのスタイルで音楽活動を始め、
当初はラップゾンバと呼ばれる、キゾンバとラップをミックスしたスタイルをやっていたそうなんですが、
04年のソロ・デビュー作ではがらりと意匠を変え、生音主体のコンテンポラリー・サウンドで、
アダルト・テイストのセンバを歌いました。
セカンドの07年作でも、哀愁漂うアコーディオンに美しいフルートなども絡ませるなど、
デビュー作の路線を踏襲し、哀愁味たっぷりのセンバを聞かせてくれます。
この2作以降のアルバム・リリースが不明なんですが、
もしこの2作で消えてしまったのなら、あまりに惜しい才能ですね。
カーボ・ヴェルデのモルナが好きなファンや、
ブラジル音楽ファンなどにぜひ聞かせたい、名作2枚です。
Hélvio "MUXIMA UAMIÊ" Maxi Music MM024.04 (2004)
Hélvio "LUA DELA" Maxi Music NM048 (2007)