先月、井口さんが出来立てほやほやのウー・ティンの新作CDを持って、
ヤンゴンのご自宅まで届けに行った際に見つけてきたというCD3枚。
井口さん、お土産、ありがとうございます。
コー・アウンジーという、初めて聞く名の男性歌手のアルバムで、
ベスト・アルバムが3タイトルも出ているほどなのだから、
相当有名な歌手なんだろうなということは、容易に想像がつきます。
井口さんによれば、最近亡くなったとのこと。
さっそく聴いてみると、50~60年代とおぼしき録音で、
これまでほとんど耳にすることができなかった、
ビルマ時代の大衆歌謡がたっぷり入っていて、大カンゲキ。
サイン・ワイン楽団が伴奏に付く古典歌謡と、
ラウンジーな大衆歌謡がごたまぜになっています。
録音時期にもバラツキがあり、3枚のアルバムに、
レパートリーも新旧録音もお構いなしに放り込んだといった編集ですね。
3枚それぞれ編集の意図があるようには思えませんけれど、
第1・3集は古典曲が多く、第2集は大衆歌謡中心のレパートリーになっています。
古典曲は8分を超す長尺のものが多く、なかには、伝統スタイルの伴奏と西洋風の伴奏が
交互にスイッチする、のちのミャンマータンズィンのような曲も聞けます。
コー・アウンジーは、メジャー曲では、晴れ晴れと伸びやかな歌声を聞かせる一方、
哀愁味のある曲では、情のある歌い回しで聴き手を引きつけます。
やわらかで甘いバリトンの声は耳に心地よく、
日本にも50~60年代は、こういう声の男性歌手が多かったような気がしますねえ。
アコーディオン、クラリネット、オーボエをフィーチャーし、
マラカスとクラベスがラテン・ムードを醸し出すナンバーや、
オルガンにブラシのドラムスのコンボ編成によるスウィンギーなナンバーなどは、
同時代のマレイシアのP・ラムリーやサローマを思わせます。
一方、アコーディオン、ギター、ヴァイオリン伴奏のポルカや、
オーケストラ伴奏による映画挿入歌ふうの曲などは、
「軽音楽の夕べ」といった雰囲気(若い人、わかります?)濃厚で、
昭和の香りが漂ってくるようじゃないですか。
この人のバイオを調べようと、ネットで検索してみたんですが、
今年の6月23日に亡くなったことくらいしかわかりませんでした。
CDのインレイを見ると、ギター、テナー・ギター、三味線(!)、
ピアノ、アコーディオン、オルガンを弾いていて、マルチ奏者でもあったようですね。
第2集のバック・インレイに、
ギターとバンジョーを弾く白人2人と一緒に写っている写真があり、
同じ時のものとおぼしき映像がYoutubeに上がっています。
それによると、二人の名は、スティーヴ・アジスとウィリアム・クロウ・フォードだそうで、
コー・アウンジーと共にビルマ語で歌っています。
3人の後ろには、膝の上に置いたバマー・ギターをスライドしているギタリストもいますね。
このあと、3人は「おお、スザンナ」をギター、バンジョー、パッタラーの伴奏で歌い、
続いてサイン・ワイン楽団が演奏するという共演風景も記録されています。
CDには収録されていませんが、どういう人たちだったんでしょう。
まだまだ未知のビルマ時代の大衆歌謡、
さらにさかのぼって、SP時代の録音も、ぜひ聴きたくなるじゃありませんか。
そんな好奇心を強烈にかきたてられた3枚でありました。
Ko Aunt Gyi "A KAUNG TA A KAUNG SONE TAY (1)" Rai no number
Ko Aunt Gyi "A KAUNG TA A KAUNG SONE TAY (2)" Rai no number
Ko Aunt Gyi "A KAUNG TA A KAUNG SONE TAY (3)" Rai no number