今年のジャズはヴィジェイ・アイヤーでキマリと、勝手に認定してますけど、
それにしても、こんなにジャズが面白くなるなんて、
ちょっと前には想像もつきませんでしたねえ。
ジャズ新作を買わなくなり、専門店からも足が遠のいていた時期が長かっただけに、
ひさしぶりに通い出すようになると、店の品揃えがガラッと変わっていて、
隔世の感というか、なんだかすごく新鮮です。
で、目下のお気に入りが、フロネシスというイギリスのピアノ・トリオ。
ピアノ・トリオといっても、
リーダーはデンマーク出身のベーシスト、イエスパー・ホイビーで、
イギリス人サックス奏者ジュリアン・アーギュロスの指揮・編曲による、
ドイツの名門フランクフルト・ラジオ・ビッグ・バンドとの共演作となっています。
ピアノ・トリオの演奏と、ビッグ・バンドのオーケストレーションを絡ませた編曲が絶妙で、
木管楽器を多用した厚みのある豊かな響きが、楽曲の魅力を引き立てています。
手数の多いアントン・イーガーのドラムスが、複雑なリズムをいとも軽やかに押し出し、
アイヴォ・ニームが紡ぐ込み入ったフレーズと絡み合って緊張感を生み出すところに、
ビッグ・バンドのハーモニーが雄大なサウンドスケープをもたらしていて、
いやあ、ぐっときますねえ。
息つかせぬ展開に汗握る場面など、ドラマティックなアレンジが効果的で、
現代的なビート・センスのピアノ・トリオが、カラフルなビッグ・バンド・サウンドを得て、
スケールの大きなサウンドを生み出しているんですね。
このピアノ・トリオの他のアルバムは聴いたことがないんですが、
ピアノ・トリオだけでは、このスケール感は出ないはずです。
ハード・ドライヴィングなインタープレイのあとに、抑制を利かせたオーケストラの
ハーモニーのパートをバランスよく配する構成には、降参というほかありません。
Phronesis "THE BEHEMOTH" Edition EDN1085 (2017)