去年買い逃したまま、すっかり忘れていた1枚。
偶然店頭で見つけ、おお、そうだったと、あわてて手に取りました。
それがメロディアス・クバーナスを名乗るヴェテラン女性二人に、
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブで名を上げたエリアデス・オチョアとの共演盤。
二人の女性の歌い口が、たまらなくいいんですよ。
ハモっているようないないような、微妙なハーモニー。
古いトローバのスタイル、ここにありですね。
伴奏を務めるクアルテート・パトリアともども、現代的なソンの感覚を加味しながら、
サンティアゴ・デ・クーバらしい伝統ソンの味わいをしっかりと受け継いでいて、
ヴィンテージならではの芳醇なコクを醸し出します。
ギタリスト、エリアデス・オチョアの歌も良くなったよなあ。
ブエナ・ビスタのメンバーのなかでは、ちょっと歌に大味なところがある人で、
正直ぼくはあまり好みではなかったんですけど、
余計な力が抜けて、軽快になりましたね。
本人たちは、ごく自然に、歌い演奏しているだけのことなんでしょうけど、
若い者にはとても真似のできない、まさに年季を経ないと出せない味わい。
このさりげなさがタマらんのですわ。
レパートリーも、いにしえのトロバドールのエウセビオ・デルフィン、
ミゲル・コンパニオーニ、マヌエル・コロナの曲に、
初期ソンの重要作曲家であるミゲル・マタモロスやイグナシオ・ピニェイロの名曲に加え、
プエルト・リコのラファエル・エルナンデスと選りすぐりで、じっくりと味わえます。
この世代がいなくなったら、もうこんな節回しで歌える歌手は、
キューバからいなくなってしまうんだろうなあ。
そう思うと、いっそうかけがえのないアルバムに思えてくる、珠玉の逸品です。
Dúo Melodías Cubanas, Eliades Ochoa Y El Cuarteto Patria "LOS AÑOS NO DETERMINAN" Egrem CD1405 (2016)