なんと、ハイル・メルギアの新録の登場です!
かつてハイル・メルギアが在籍していたワリアス・バンドで、
ともに鍵盤担当だったギルマ・ベイェネの復帰作が出たのが、ちょうど1年前。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-03-12
今度はハイル・メルギアが前線復帰するとは、なんだか感慨深いものがありますねえ。
81年、ワリアス・バンドがアメリカ・ツアーをするも失敗に終わり、
夢破れた二人は、他のメンバーがエチオピアへ帰国するのを横目に見ながら、
そのままアメリカに移り住んだのですね。
ハイル・メルギアは、ワリアス・バンド脱退後、
ズラ・バンドを結成して演奏活動を続けましたが、
エチオピアでの輝かしいキャリアとは比べものにならないドサ回り生活だったらしく、
当時録音した多重録音のカセット作品には、
いかにも場末に身をやつした音楽家といった感の、
うらぶれムードが独特の味わいを醸し出していましたよね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-07-25
そのズラ・バンドも92年には解散してしまい、
その後ハイルは、ワシントンDCで空港のタクシー・ドライヴァーとして生計を立て、
音楽の現場第一線から身を引いていたのでした。
ところが20年後、事態は大きく動きます。
アフリカ音楽カセットのマニアというモノ好きな若者が、
ハイルの85年のカセット作を発見し、自身主宰のレーベル、
オウサム・テープス・フロム・アフリカから13年にリイシューすると、
ピッチフォークなど一部のメディアから人気が沸騰。
ハイルは、一躍注目のアーティストとして取り上げられるようになったのでした。
これを機に、ハイルは演奏活動を再開し、
翌年には、エチオピア音楽黄金時代に残した77年のレア盤傑作までも復刻され、
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2014-11-25
さらに注目を集めて、ついに今回の新録に至ったというわけですね。
編成は、ハイルが弾く鍵盤にベース、ドラムスのトリオというシンプルさ。
フリー・ジャズ系のポーランド人ベーシスト、マイク・マコウスキーと、
大友良英とペリルというバンドを組んでいた
オーストラリア人ドラマーのトニー・バックという人選は、成功です。
ハイルは、アコーデイオン、ピアノ、エレクトリック・ピアノ、オルガン、
メロデイカと多彩な鍵盤を弾き分け、中には次々と楽器を替えて演奏する曲もあります。
ベースがマシンコのように弓弾きを聞かせたり、ドラムスも多彩なリズムを叩き分けたり、
ハイルのエチオ・ジャズをよく理解したプレイをしていますよ。
6曲目のハイルのピアノ・ソロのあとに、シークレット・トラックが2曲あって、
ハイルが歌を披露するというお楽しみもあります。
ところで、今回のリリース・インフォメーションに、「15年ぶりの新作」とあり、
03年にラスト・レコーディングがあったことを示唆しているんですが、
未発表作があったんでしょうか。
85年のカセット作以後のハイルの作品を知らないので、これも気になるところです。
Hailu Mergia "LALA BELU" Awesome Tapes From Africa ATFA028 (2018)