サンパウロの若手バンドリン奏者の3作目。
前2作目を試聴した時、大勢のゲストを迎えすぎていて、
主役の個性がぼやけ、捉えどころがなかったような記憶が残っています。
演奏内容もショーロというより、
ジャズ的なアプローチのインスト作品だったんじゃなかったっけ。
ま、いずれにせよ、その時は手を伸ばさず、やり過ごしてしまったんですが、
ファビオ・ペロンという名前は、しっかりと頭の片隅に残りました。
で、この本作、表紙デザインこそモダン・インスト系に見えますが、
中身は純然たるショーロ・アルバム。
それもバンドリンと7弦ギター、ギターの3人のみで
全編を通しているんだから、相当な実力がなければできないことです。
7弦ギタリストは、サンパウロ・ショーロ・シーンの重鎮、ゼー・バルベイロ。
主役を徹底的に引き立てて、裏方に回ることにかけては、
当代随一のショロンといえる名手なので、彼の名があるだけでも、内容保証付きです。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2010-07-31
そして、主役のファビオは、技巧派ともいえる実力者。
その実力をしっかりと聞かせる見せ場を作りつつも、
アルバム全体としてはテクニックに流れず、
歌ゴコロあふれるプレイに心を砕いています。
その丁寧なニュアンスのつけ方が、
エレガントなメロディをいっそう引き立てて、胸に響きますよ。
ショーロ好きは、こういう地味なアルバムにこそ
ショーロの醍醐味をおぼえるというか、長く付き合えるアルバムになるのです。
Fábio Peron "AFINIDADES" no label no number (2016)