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超弩級のカヴァキーニョ奏者 メシアス・ブリット

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Messias Britto  Cavaquiho Polifonico.jpg   Messias Britto  BAIANATO.jpg

立て続けに、ショーロの新作であります。
今度はバイーアの若手カヴァキーニョ奏者のセカンド作。
14年のデビュー作で、目の覚めるような早弾きを披露して、
ショーロ・ファンの間で話題となった、メシアス・ブリットです。

あのデビュー作は良かったよねえ。
息つかせぬ高速パッセージを繰り出すバカテクぶりに、目がテンになりましたけれど、
アミルトン・ジ・オランダのようなショーロの枠をハミ出した、
現代的なインストゥルメンタルではなく、
伝統ショーロのフォーマットを崩さない音楽性に、頼もしさをおぼえたもんです。

ほぼ自作曲で固めたレパートリーには、バイオーンやフレーヴォもあり、
アルバム・タイトルや、
サルバドールのランドマークを描いたジャケットが示していたように、
バイーア産のショーロであることをアイデンティファイしていました。
本来リズム楽器であるカヴァキーニョがソロ演奏するために、
もう一人リズム役のカヴァキーニョ奏者が伴奏に加わっています。

高速のショーロ・ナンバーばかりでなく、スローでは絶妙な歌ゴコロを聞かせていて、
クレジットはありませんが、サンパウロへ渡って演奏活動をしている
ピアニストの米田真希子が、しみじみとしたプレイで主役を守り立てています。

さて、新作の方ですが、これがびっくり、カヴァキーニョの完全独奏アルバム。
ブリットたった一人で、多重録音することもなしにソロ演奏するとは、攻めてますねえ。
まだ2作目でこういう挑戦するのも冒険なら、
それを見事になしとげる実力に、ウナらされます。

オープニングの愛らしいルイス・ゴンザーガのバイオーンから、
ナザレーの「オデオン」やヴァルジール・アゼヴェードなどのショーロ・ナンバー、
「カリニョーゾ」やアリ・バローゾのサンバ・カンソーン、
ジョビンの「シェガ・ジ・サウダージ」、などの有名曲も今回は取り上げ、
自作曲と半々といったレパートリーとなりました。

感心するのは、ブリットのフレージングの美しさ。
これこそまさしくショーロの真髄で、メロディの歌わせ方に、
ジャズではないショーロとしてのインスト音楽のアイデンティティがあります。
「カリニョーゾ」の歌わせ方なんて、見事じゃないですか。
さらっと短く早弾きを交えたり、美しいハーモニクスを加えても、
けっして弾きすぎない、技巧をひけらかせないプレイ・スタイルが見事です。

この人には、このままジャズを勉強しないで、ショーロの味を保っていてほしいなあ。
現代的なインストも大好きだけれど、
だからといって、こういう古典的なショーロの味も失ってほしくない。
ジャズを身につけると、こういうメロディの歌わせ方を失う人がほとんどなので、
ブリットくんには、ぜひ今後もショーロの世界で精進していくことを願います。

Messias Britto "CAVAQUINHO POLIFÔNICO" no label no number (2017)
Messias Britto "BAIANATO" no label no number (2014)

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