声が立っている。
第一声を聴いただけで、才能に恵まれた歌い手だということが、すぐにわかります。
スコットランド北東部のアバディーンシャーから登場した、
アイオナ・ファイフのデビュー作。
まだハタチという若さで、その清廉な発声の粒立ちに、
ジュリー・ファウリスのデビュー時を思い起こしました。
アバティーンシャーといえば、バラッドの宝庫として知られる土地柄。
フランシス・ジェームズ・チャイルドの『英蘇バラッド集』に使われた
一次資料の三分の二が、アバディーン州から集められたことが、その証しです。
アイオナは、地元のリヴァイヴァリストと呼ばれる伝承歌の歌い手たちから、
じかに歌を習い、バラッドを研究してきたという熱心な人だそうです。
歌詞カードに、「誰それのシンギングから学んだ」と書き添えられているように、
かのジーニー・ロバートソンを生んだ、トラヴェラーたちが伝えてきたバラッドの伝統は、
こうした若い世代に着実に受け継がれているんですね。
http://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2013-03-29
スコットランド文化の豊かさを見る思いがします。
文献や音資料ではなく、その文化の担い手である人間から直接歌を学ぶことは、
単に歌を習うことにとどまらず、
歌の背景である生活や文化をまるごと知る、絶好の機会となります。
バラッドが生まれた時代から、
社会状況も生活習慣も大きく変貌した現代に、その歌を歌うためには、
口伝によって歌の意味を理解することは、なにより貴重なはずです。
“Two Sisters” のスコットランド・ヴァージョンである
“The Swam Swims” でのアイオナの歌唱が、とりわけ心に響きました。
バラッド理解に注いできた若いアイオナの熱意が、見事に結実したデビュー作です。
Iona Fyfe "AWAY FROM MY WINDOW" Cairnie IF18AWAY (2018)