スゴいな、ライヴでこの完成度って。
まるでスタジオ録音なみのクオリティじゃないの。
しかもギター一本の弾き語りというところが、
ギター弾き語り王国、ブラジルならではでしょうか。
ジョアン・ジルベルト、ジョアン・ボスコ、セルソ・フォンセカという先達が残した
弾き語りライヴ名盤のラインナップに、本作も加わりますね。
サン・パウロのシンガー・ソングライターというダニーロ・モラエス。
これがすでに7作目と聞きますが、寡聞にしてこれまで知りませんでした。
ジャケットに描かれたコンサートの様子は、ダニーロの音楽世界にふさわしく、
まるでホーム・パーティのようなインティメイトな雰囲気を演出しています。
なんでもサン・パウロのスタジオにお客さんを入れて、レコーディングしたんだそう。
なにより、ダニーロのハートウォーミングな歌い口にひきこまれます。
この温かな声だけで、才能といえますね。
甘い歌声に、この人の育ちの良さを感じます。
小気味よいギターのバチーダも確かで、アルペジオで柔らかく弾きもすれば、
ナイロン弦ギターばかりでなく、スティール弦のカイピーラ・ギターを使って、
華やかなギター・サウンドも演出します。
シンプルなギター弾き語りだけで、これほど豊かな音楽世界を生み出せるのは、
もちろんダニーロの楽曲の良さもありますけれど、
1曲ごとにリズムが違い、それに合わせてギターの奏法も多彩だからですね。
あれっ、と思ったのは、セウの‘Mais Um Lamento’ を歌っていたこと。
セウのデビュー作に入っていた曲で、ダニーロが提供した曲だったんですね。
サン・パウロ新世代女性歌手として注目を集めたセウは80年生まれ、
ダニーロは79年生まれと、二人は同世代なのか。
レパートリーで意外に思ったのが、ジャクソン・パンデイロの持ち歌の‘Tililingo’。
サン・パウロの新世代が、こんな古いフォローをレパートリーに取りあげるなんて、
やっぱりブラジルの伝統は懐が深いわ。
トリアングロのリズムが聞こえてくるような楽しい仕上がりで、
ダニーロのリズム感バツグンな滑舌のいい歌いっぷりが最高です。
Danilo Moraes "OBRA FILHA" no label COSA001 (2018)
Céu "CÉU" Ambulante/Tratore AMB03 (2005)