ダンドゥットの新作から20年近く遠ざかっていたのは、
コプロやハウスといったディスコ化のせいもありますけれど、
CDが制作されなくなり、音楽配信が中心となってしまった影響が大きいですね。
なんせインドネシアでは、ケンタッキーフライドチキンでしか買えないCDが、
中産階級以上のミュージック・シーンを象徴するようになってしまったんだから、
場末感漂う下層庶民のダンドゥットなど、蚊帳の外になるのも当然でした。
そんなところに去年知った、イラマ・トゥジュフ・ナダというレーベルには驚かされました。
コプロやハウスといった流行とは無縁のラインナップで
温故知新なダンドゥット・アルバムを出しているのは、嬉しかったなあ。
すると最近もうひとつ、ペリタ・ウタマというジャカルタのレコード会社からも
ダンドゥットのアルバムが出ているのを知りました。
手に入ったのは、現在のダンドゥット・シーンで人気沸騰中の女性歌手2人。
昨年再生回数1億5千回で国内2位を記録した‘Sayang’を歌うフィア・ファレンと、
今年それをさらに2千回上回る1億7千回を記録した
‘Jaran Goyang’を歌うネラ・カリスマです。
ポップ・コプラのクイーンの異名を持つフィア・ファレンは、
その圧倒的人気からKFCからもCDも出していましたよね。
ド派手なダンス・トラックを抑えて歌謡性を強めたプロデュースは、
KFC向けだったのかもしれませんが、爆発的ヒットとなった‘Sayang’も、
ラップやバニュワンギも交えたポップ・チューンでした。
ディスコ路線が下火になって、ポップ/歌謡路線に揺り戻しがきているのかも。
フィア・ファレンはそんなに歌がうまいわけでもないし、
正直なぜそんなに人気があるのか、よくわからないんですけど、
ネラ・カリスマは、ちょっと鼻にかかったコケティッシュな歌いぶりに
ダンドゥットらしさがよく味わえる、いいシンガーです。
コプロ以降のスピーディなダンドゥットで、現代性のあるサウンドながら、
ロック調、インド風味、レゲエなどを織り交ぜたダンドゥットらしい雑食性を発揮した、
かつてのダンドゥット・サウンドを活かしているところも、いいんだな。
イラマ・トゥジュフ・ナダのような温故知新ではなく、
今のシーンに息づくダンドゥットのヴィヴィッドな手触りを感じます。
Via Vallen "OM SERA" Pelita Utama no number (2017)
Nella Kharisma "SEBELAS DUABELAS" Pelita Utama no number (2017)