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トゥアレグ版『パープル・レイン』 エムドゥ・モクタール

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Mdou Moctor  AKOUNAK TEDALAT TAHA TAZOUGHAI.jpg

トゥアレグ版『パープル・レイン』ついにDVD化!
これは嬉しい。観たかったんです、この映画。
ニジェールのトゥアレグ人ギタリスト、エムドゥ・モクタールが主演した
『かすかに赤みがかったブルー・レイン』です。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-10-18

監督を務めたサヘル・サウンズの主宰者クリストファー・カークリーは、
全編タマシェク語の音楽映画は世界初と豪語しており、
ナイジェリアのハウサ語映画に牛耳られている
サヘル地帯の映画事情に風穴を開けようとしたと、鼻息荒く語っています。

この映画で描かれているのは、アガデスに暮らすトゥアレグ青年たちの日常。
レベル・ミュージックといった政治的なテーマは、ここには出てきません。
エレクトリック・ギター、オートバイ、携帯電話がこの映画のキーとなっているように、
疎外されたサハラの若者たちの心情をすくい上げた娯楽映画になっています。

当初カークリーは、『パープル・レイン』をベースにした脚本を作っていったものの、
現場で俳優たちからシナリオを拒絶され、よりトゥアレグの若者たちの現実に
沿った内容へと、どんどん修正されていったんだそうです。

その修正の結果、敬虔なイスラーム教徒の父親が、
ギターを弾くヤツなど、麻薬やアルコールの中毒者だけだと、
息子のギターを燃やしてしまうシーンや、
エムドゥと恋人が仲たがいするエピソードのシーンが生まれたのだとか。

このほかにも、コンペティションに向けてリハーサルをしていたエムドゥの演奏が、
小遣い目当ての少年に携帯電話で盗み録りされて、
ライヴァルのギタリストに自作曲を盗まれたり、
かつて父親も音楽家を夢見て詩を書いていたことを知ったエムドゥが、
父の詞に曲を付けて歌うなどのプロットにも、
トゥアレグのリアルな現実がよく捉えられています。

こうしてみると、この映画、『パープル・レイン』というより、
ジミー・クリフの『ザ・ハーダー・ゼイ・カム』とカブるところもありますね。
出演しているキャストの大部分がアマチュアで、
ミュージシャン自身が演じているところも同じなら、
かたやキングストン、かたやアガデスという、
街のヴィヴィッドな姿を活写しているところもよく似ています。

フランス人撮影監督ジェローム・フィーノとともに、
たったの8日間で撮影を終えたという低予算映画ながら、
現場での葛藤が良い方向へ作用して、ストーリーにリアリティを生み出し、
トゥアレグのアマチュア俳優たちのいきいきとした演技につながった、秀逸な作品です。

全編75分。英仏語字幕付、NTSC方式なので、日本のプレイヤーで視聴可能。
1000部限定のリリースです。

[DVD] Mdou Moctor "AKOUNAK TEDALAT TAHA TAZOUGHAI" Sakel Sounds no number (2015)

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