1920~30年代に活躍したギター兼バンジョー奏者、
ボビー・リーキャンの単独アルバムが、
戦前ジャズ/ブルースの専門レーベル、フロッグから出ました。
よほど熱心な戦前音楽ファンでないと知る人もいないでしょうけれど、
ぼくにとっては、アルバータ・ハンターや
マーガレット・ジョンソンの伴奏で忘れられない人です。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-03-26
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2011-03-24
いまだに写真の1枚も見つかっていない、謎のリーキャンですけれど、
近年の調査で判明したさまざまな遍歴が、ライナーに載せられています。
バンジョーをバリバリとフィンガリングする、太く逞しいサウンドがリーキャンの持ち味。
低音弦を響かせてドライヴするギターに、その凄腕が表われています。
高音弦を華麗に響かせてメロディ・ラインを作るロニー・ジョンソンとは、
真逆のタイプですね。リーキャンが高音使いするのは、
装飾的に和音を鳴らすときくらいなんですけれど、
12弦ギターのような複弦の音がするのが不思議。
解説には、チャーリ・クリスチャンのプレイとの類似性が指摘されていますけれど、
その見解はぼくには疑問。リーキャンは、ギターをメロディ楽器として弾くことより、
リズム楽器としてプレイすることを重視した人で、
ショーロの7弦ギターのように、低音弦をガンガン鳴らすプレイが特徴でした。
このCDには、相棒のハーモニカ奏者ロバート・クックシーと組んだ
サウス・ストリート・トリオや、ウォッシュボード・バンド、
女性歌手の伴奏など、さまざまなタイプの演奏が収録されています。
そのどれもが、ジャズというよりヴォードヴィル色の強いもので、
レパートリーのほとんどがダンス・チューンというところが嬉しいんですよね。
黒人大衆演芸ムードがいっぱいの、
エリザベス・スミスとシドニー・イーストンの掛け合いも聴きもの。
エリザベスの歌に茶々を入れるシドニーの語り口が、いいんだなあ。
映画『ストーミー・ウェザー』で、
エイダ・ブラウンの歌にファッツ・ウォーラーが絡むシーンを思わせますね。
そのファッツ・ウォーラーが、パイプ・オルガンを弾いているトラックもありますよ。
ギター弾き語りで聞かせるリーキャンの歌にも、味わいがあります。
ボビー・リーキャンは、ずいぶん昔にドキュメントがCD化した2枚がありましたけれど、
選曲・曲順の良さでは、このフロッグ盤の方に軍配が上がりますね。
音質も驚くほど良くって、ガッツのある低音がすごく出ていますよ。
寒くなってきた宵の口に聴くのにもってこいの、
身体も気持ちもほっこりと温めてくれる、最高の一枚です。
Bobby Leecan "SUITCASE BREAKDOWN" Frog DGF86