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サハラに沈むジャズ・ハウス サン・ジェルマン

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St Germain  ST GERMAIN.jpg

フレンチ・タッチ/ジャズ・ハウスのプロデューサー、
サン・ジェルマンことルドウィック・ナヴァーレの新作。
00年の大ヒット作“TOURIST” 以降、すごいごぶさた~と思ったら、
じっさいあれ以来の作なんだって。15年ぶりになるわけか。
クラブ・ミュージックのコーナーなんて、普段チェックもしないくせに、
こういう自分向きの作品とは、ちゃんと出会えるという不思議さ。
長くレコードと付き合っていると、相手から呼ばれるのを感じます。

ライナーには、砂に埋もれるルドウィック・ナヴァーレの3Dマスクが。
砂からかろうじて見せる顔の輪郭がアフリカ大陸を表すように、
新作はアフリカの音楽家たちと共演したアルバムとなっています。
クラブ・ミュージックとアフリカ音楽の関係でいうと、ディープ・ハウスの連中が作る、
「アフロ」だとか「トライバル」を冠したデタラメなまがいモノに、
ずいぶんウンザリさせられてきたものですけれど、
ナヴァーレはアフリカ音楽に理解があるようですね。

砂まみれのナヴァーレの顔がサハラ砂漠を暗示するように、
トゥアレグ、ソンガイ、プールなど、
近年注目を浴びる非マンデ系のマリ音楽にフォーカスを当てています。
1曲目からンゴニ、バラフォン、コラに絡むブルージーな歌に、
「ディープ・ハウス・ミーツ・デザート・ブルース」かと思いきや、
ライトニン・ホプキンスの“You Caused My Heart To Weep” をサンプルしていると知り、仰天。
ナヴァーレ、やるなあ。このアイディアには、ウナらされました。

在フランスのマリ人ミュージシャンばかりでなく、
ズマナ・テレタ(ソク)、アダマ・クリバリ(カマレ・ンゴニ)といった、
当代マリの一流ミュージシャンを起用しているところも嬉しいし、
声がだいぶ荒れてしまったとはいえ、ナハワ・ドゥンビアの歌には、グッときましたね。
こうしたマリのミュージシャンたちの人選を、コーディネーターの手を借りることなく、
ナヴァーレ自身がやったのだとしたら、相当なマリ音楽通といえますよ。

浮遊するハウス・ビートや、洗練されたクロスオーヴァー・サウンドは、
従来からのナヴァーレのジャズ・ハウスの作法にのっとったもの。
クールなサウンドに沈む砂漠のブルースは、冬のパリの冷気を伝えます。

St Germain "ST GERMAIN" Primary Socoety/Parlophone/Warner Music France 0825646122011 (2015)

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