ヨイクのシンガーとアコーディオンの女性デュオのアルバム。
ヨイクをコンテンポラリーなサウンドで歌うアーティストは、
アリ・ボイネはじめいろいろ聞いてきましたけれど、
どれも<極北のエスニック音楽>といった作り物ぽさが拭えなくて、
二の足を踏んできたのが正直なところ。
でも、この二人はちょっと印象が違いました。
まず、ヨイクのミスティックな面を誇張していないのが、いい。
ヨイクが持つ霊性を過度に演出することなく、
音楽に生命感が宿っているのが自然に感じ取れます。
シャーマニズムといったサーミ人の伝統文化から抜け出た現代から、
ヨイクをリサイクルしているようなニュアンスさえ感じさせるその作法には、
先人たちのワールド・ミュージック的な語法から離れた自由さを感じます。
ヨイクの特殊性を強調したサウンドを組み立てるのではなく、
フィンランドのアコーディオン音楽と融合させながら、
そのなかにヨイクの即興性を浮かび上がらせる二人のやり方は、
伝統の継承とは異なる、現代性に富んだ方法論を獲得したんじゃないでしょうか。
歌とアコーディオンの二人を中心に、手拍子やパーカッション、
ビートボックスなどのゲストを多数迎えているように、
伝統の呪縛から放たれたそのサウンドには解放感があり、
風通しが良く、すがすがしさを覚える新鮮さが得難いですね。
Vildá "VILDALUODDA / WILDPRINT" Bafe’s Factory/Nordic Notes MBA030 (2019)