CDショップのジャズ・コーナーであれこれ試聴していたところ、
まるでシュミじゃないサイケなジャケットのCDに、ピンとくるものがありました。
全然知らない人でしたけれど、キレのあるコンテンポラリー・ジャズ・ギターに、
こりゃあいい、と買ってみたところ、家に帰って聞いてみれば、ええぇ~?
まるで違うエレクトロな音楽が飛び出し、ビックリ。
なるほど、これならジャケどおりだわなと、ひとりごち。
どうやら試聴機に間違ったCDが入っていたようで、翌日再訪したところ、
「すみません、これ全然別のCDですね」と店員さん平謝り。
試聴機に入っていたのは、こちらですと差し出されたのは、
UK新世代ジャズのプレストン=グラスゴウ=ロウの新作。
なーるほど、彼らか! それならナットクだわ。
おととしのデビュー作がお気に入りとなっていた、プレストン・グラスゴウ・ロウ。
https://bunboni58.blog.so-net.ne.jp/2017-05-09
デヴィッド・プレストンのメカニカルなギターに、ケヴィン・グラスゴウの6弦ベース、
ローリー・ロウのドラムスが緊密に絡み合ってインプロヴァイズする快感は、
2年ぶりの今作も変わりません。
ローリー・ロウのしなやかなドラミングが、
バンド・サウンドにあざやかなコントラストをつけ、
ギターとベースにフリーなスペースを与えることで、
バンドのダイナミズムを拡張しているところが、この3人組のキモ。
パット・メセニー、アラン・ホールズワース、ロバート・フリップに通じる
デヴィッド・プレストンのギター・テクニックも舌を巻くばかりなんだけれど、
そのギター・サウンドを輝かせているのが、ローリーのドラミングといえます。
多くのトラックをデヴィッドが作曲していますが、
今作の聴きどころは、ケヴィン・グラスゴウが作曲した2つのトラック。
そのひとつが、アルバム中もっともロックぽいサウンドとなったタイトル・トラック。
オーヴァードライヴしたベースがごつい響きをあげて、
重厚なメタル・ロックを繰り広げます。
一方、ドイツの現代音楽の作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの頭文字を
曲名に取ったラスト・トラックは、十二音技法を取り入れたもので、
このトリオの音楽性をさらに前進させましたね。
繊細にして豪胆な新世代ジャズ・ギター・トリオ、次作は間違えないように買おう。
Preston Glasgow Lowe "SOMETHING ABOUT RAINBOWS" Whirlwind Recordings WR4731 (2018)