クロンチョン・トゥグー? そんなクロンチョン楽団があるの?
クロンチョン発祥の地トゥグーのクロンチョン楽団といえば、
由緒あるオルケス・クロンチョン・カフリーニョ・トゥグーが有名ですけれど、
クロンチョン・トゥグーという楽団名は、初耳です。
調べてみると、オルケス・クロンチョン・カフリーニョ・トゥグーの
チェロ奏者だったアレンド・J・ミッシェルが、88年に結成した楽団とのこと。
アレンド・J・ミッシェルは、かつての解放奴隷(トゥグー集落の住民)の末裔たちの
絆を深めるため、76年にコミュニティ組織を設立し、
さらに若い世代へ伝統音楽を継承するために、クロンチョン・トゥグーを結成したとのこと。
93年にアレンドが死去した後は、息子のアンドレが楽団リーダーを継いだそうです。
トゥグーのクロンチョン楽団は、70年代になると、
オルケス・クロンチョン・カフリーニョ・トゥグー
ただひとつになるまで衰退してしまいますが、
アレンドたちの努力によって、若手音楽家の育成が図られ、
現在オルケス・クロンチョン・カフリーニョ・トゥグー、クロンチョン・トゥグー、
クロンチョン・ムダ=ムディ・コルネリスの3つのグループが活動しているそうです。
で、このクロンチョン・トゥグー、いいじゃないですか。
真面目な伝統保存一辺倒なのかと思いきや、
風通しのいい演奏ぶりで、とても自由なんですよ。
伝統保存に足を縛られることもなければ、型を守るあまり窮屈となることもなく、
伸び伸びと演奏しているのが伝わってきて、嬉しくなります。
もちろん、クロンチョンの伝統形式に沿った演奏ではあるものの、
洒落たブリッジを挟み込んだり、
ヴァイオリンを多重録音して柔らかなハーモニーを作ったり、
ギターのちょっとしたトリッキーなプレイでユーモラスな場面を付け加えたりと、
自然なヘッド・アレンジで生まれたアイディアが、ふんだんに盛り込まれています。
優雅なワルツの‘Oud Batavia’ や、
若い女性歌手が歌う‘Mardijkers’ のしっとりした味も格別。
全体にアマチュアぽさが貫かれているところもこの楽団の良さで、
ローカルな味わいに溢れています。
クロンチョンの生まれた原点が、そのまま息づく姿をパッケージした得難い作品です。
Krontjong Toegoe "DE MARDIJKERS" Gema Nada Pertiwi CMNP438 (2018)