こういうシリアスなモーダル・ジャズを聴くのは、ひさしぶりかも。
クリス・クロスでずっとリーダー作を出していた
トランペッターのアレックス・シピアジンが、
新たにブルー・ルーム・ミュージックから出した新作です。
クリス・クロスじゃありえない、現代的なセンスのあるジャケットがいいですねえ。
「ジャズ保守」を絵に描いたクリス・クロスのジャケット・デザインが
どうにも好きになれないので、新作ジャケットはめちゃくちゃ好感持てます。
メンバーは、クリス・ポッター(ts)、ウィル・ヴィンソン(as)、
ジョン・エスクリート(p, key)、マット・ブリュワー(b)、
エリック・ハーランド(ds)という、クリス・クロス時代からのおなじみのメンバー。
60年代の新主流派よろしく、菅の合奏テーマで始まり、メンバーのソロ回しの後、
テーマに戻るといったオーセンティックなコンポジションに、
すごくひさしぶりといった感触があったんですけれど、
けっして60年代回帰ではなく、現代のジャズとしてフレッシュな響きを持っています。
アレックスのリーダー作ながら、メンバーにソロのスペースを均等に配分していて、
メンバーの技量をたっぷりと堪能できる作品となっているんですね。
アレックスの完成度の高いコンポジションともども、聴き応え十分であります。
アレックスの超絶テクも、アグレッシヴに迫るばかりではなく、
スローでのフリューゲルホーンのストイックな演奏ぶりなど、
キャリアを重ねた余裕を感じさせるプレイにウナらされます。
長年共演しているクリス・ポッターとのあうんの呼吸も、完璧ですね。
エレクトロニック・ミュージックからフリーまで、
振り幅の広いプレイをするジョン・エスクリートとの相性も良く、
ハービー・ハンコックを思わすアクースティック・ピアノや、
アヴァンギャルドに迫るキーボード・プレイなど、
コンテンポラリーなサウンドに貢献しています。
アルバムのフックとなっている女性ヴォーカリストを起用したトラックでは、
メカニカルな複雑なラインをヴォーカリーズしているんですけれど、
ヴォーカリスト自作の曲では、ネオ・ソウルな表情を見せているところがイマっぽいですね。
エリック・ハーランドの細かくビートを割ったドラミングも現代的といえ、
インタールードの短いトラックで叩く、
アフリカン・リズムを参照したパーカッション・プレイも、
モーダル・ジャズ旧世代にはなかったリズム・アプローチです。
新世代のジャズのイキオイも借りて、モーダル・ジャズも元気になったというか、
めちゃくちゃ刺激的でフレッシュな1枚で、絶賛愛聴中であります。
Alex Sipiagin "NOFO SKIES" Blue Room Music no number (2019)