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新時代エチオ・ポップの逸材 チェリナ

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Chelina.jpg

エチオピアン・ポップの新時代を予感させたツェディでしたけれど、
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2019-10-30
あの作品はアメリカ西海岸に渡って活動するディアスポラならではの音楽性であって、
エチオピア国内から彼女のようなアーバンなセンスのアフロ・ポップが
登場するのは難しいだろうなと思っていたら、いや、時代は動いていましたねぇ。

そう実感させられたのが、
チェリナという26歳の女性シンガー・ソングライターのデビュー作。
柔らかな発声にチャーミングな歌いぶりが魅力的なだけでなく、
これまでのエチオピアン・ポップの水準をはるかに超えたプロダクションが画期的です。

チェリナの音楽性を一言でいえば、ポップ・レゲエということになると思うんですが、
従来のエチオピアン・レゲエのシンガーにはみられない、
今日的なネオ・ソウルやジャズと親和性のあるハイブリッドなサウンドを聞かせていて、
「エチオピアのシティ・ポップ」と呼びたくなりますね。

チェリナは、歌手だった母親からの勧めで、
大学に進学して法律を学ぶ予定だったのを音楽学校へと進路を変更し、
そうして音楽家になったのだそうです。
親の反対を押し切って音楽家になるのが世の常だというのに、
こんな真逆のケースもあるんですねえ。

キャリアのスタートもユニークなら、デビューまでの道のりも、かなりユニークです。
母親が音楽業界に通じていたことから、多くのミュージシャンやプロダクションとの
コネクションがすぐに出来、デビューやアルバム制作の話も相次いだという、
超恵まれた環境にあったようなんですが、
彼女はデビューを急がず、むしろ自分の成長に時間をかけたとのこと。

多くの歌手たちのように、クラブやレストランでの演奏活動を行わず、
作曲活動に専念してアルバムの制作を進め、
3年前にアルバムをいったん完成させていたそうです。
しかしその後、出産などによる2年間のブランクの間に
新たなアイディアが生まれ、スポンサー面での課題なども現れ、
アルバム制作をやり直すことになったとのこと。

そうして長い歳月をかけたデビュー作は、発売直後から話題を呼び、
昨年10月に開催されたシェゲルFM主催の第9回レザ賞で、
最優秀新人賞と年間ベスト・アルバム賞のダブル受賞を獲得しました。
そんなエピソードも、本作を聴くといちいちナットクできる、
チェリナのユニークな個性が発揮されたこのアルバム、
インターナショナルで成功しても不思議はありませんよ。

エチオピア色は皆無と思いきや、
1曲だけエチオピアの旋法をさりげなく使った11曲目の‘Beyikrta’ では、
ほのかなエチオピアの薫りが漂い、頬がユルみました。
新時代エチオ・ポップの逸材といえるチェリナ、
ジャズ系のミュージシャンを起用したアルバムも期待してみたいなあ。

Chelina "CHELINA" Chelina Music no number (2019)

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