カジュアルなシュヴァル・ブワを聞かせる、マルチニークのおっさんグループ。
若手グループなのかと思いきや、クリップを見たら、
メンバー全員がけっこういい年で、長年一緒にやってきた仲間みたいですね。
デデ・サン=プリやマルセのように、
シュヴァル・ブワの可能性を拡張するような音楽と違い、
かつてマルチニークの移動遊園地のアトラクションで人気だったという、
手押し回転木馬の伴奏音楽だった時代を思わせるような、
オーセンティックな演奏がなごめます。
笛と太鼓ほか打楽器に、リズム・セクションが付いただけの編成で、
きびきびとしたリズムが、人々を心地良いダンスに誘います。
ツイン・ベースというのがユニークなグループで、リード役のベースが
笛のメロディをユニゾンで弾いたり、リズムの裏を取ったりして、
かなり面白いラインを弾いているのが耳を引きます。
キレのいいタンブー(太鼓)の響きと、
歌とコーラスのコール・アンド・レスポンスがほがらかで、
田舎の芸能らしいシュヴァル・ブワの良さを堪能できますよ。
ベースやドラムスが入っているので、昔ながらの伝統的なスタイルではないですけど、
それでも回転木馬の内側で演奏していた時代を思わせるのは、
ほっこりとしたメロディの温かさゆえですね。
ユジェヌ・モナ以後、デデ・サン=プリ、マックス・シラ、マルセなど、
シュヴァル・ブワを現代化する試みがさまざまに続けられていますけれど、
こんな普段着姿のシュヴァル・ブワがたっぷり聞けるアルバムというのも、
今日びなかなか貴重じゃないでしょうか。
Mathurin Rovillon & Bwa Kannel "MATHURIN ROVILLON & BWA KANNEL" Debs Music no number (2019)