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古典サンバ最高の男性歌手 マリオ・レイス

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Francisco Alves e Mario Reis.jpg   Mario Reis  UM CANTOR MODERNO.jpg

アラシ・コルテスをひさしぶりに聴き返したら、
古典サンバをもっと聴きたくなっちゃいました。
戦前のサンバ黄金時代の男性歌手で、ぼくが一番好きなのはマリオ・レイス。
当時の大スターのフランシスコ・アルヴィスとともに、人気を二分した歌手です。

フランシスコ・アルヴィスが声を張って歌う、
どちらかといえば劇場向きの古いタイプの歌手だったのに対し、
マリオ・レイスはマイクロフォンに適したしゃべるような歌い方をするタイプで、
蓄音機とレコードの普及によってポピュラー音楽が大きく発展する新しい時代に、
うってつけの歌手でした。
ライヴァルの二人は一緒にもよく歌い、戦後のLP時代になってから、
二人のデュエット集が10インチ盤にまとめられたこともあります。

マリオ・レイスの歌唱法は、劇場でサンバを聴く時代から、
ラジオでサンバを聴く時代へ移り行くのにマッチしただけでなく、
サンバのシンコペーションを表現するのにも、より適していたといえます。
サンバのシンコペーションを全身で表現した不世出の歌手、
カルメン・ミランダとデュエットした“Alô Alô” は、サンバの歴史的な名唱のひとつですね。

マリオは十代の頃、サンバの大作曲家シニョーの家へギターを習いにいっていた生徒で、
マリオがあまりサンバを上手く歌うので、シニョーにすすめられて歌手となったといいます。
スター歌手となってからは、マンゲイラの丘をのぼってカルトーラに会いに行き、
カルトーラの曲“Que Infeliz Sorte” を買った逸話が有名ですね。
この曲は録音のチャンスに恵まれませんでしたが、
当時の大スターがカルトーラの曲を買ったことで、
カルトーラの名前が知れ渡るようになり、
のちにフランスシコ・アルヴィスやカルメン・ミランダも
カルトーラの曲を買って歌ったのでした。

サンバが黄金時代を迎えたブラジルの20年代は、スター歌手が続々と生まれ、
歌手たちはヒット曲を出すため、常に新しい曲を探していました。
時には、スター歌手本人がゲットーに出向き、
作曲家に曲をきかせてもらい、曲を買い取っていたんですね。
こんなことは、黒人差別の激しかったアメリカだったら、とても考えられなかったことです。
ちょっと時代が違う例え(20年代のアメリカでは例えようもありません)でいうなら、
ビング・クロスビーがミシシッピーへ出かけていって、
マディ・ウォーターズからブルースを買うっていう話です。
ありえませんよねぇ。

そんな歌手と作曲家とレコード会社が理想的な関係にあったブラジルで、
大衆音楽サンバが育まれたんですね。そんなシーンのど真ん中で活躍した、
マリオ・レイスを楽しむのにうってつけなのが、この3枚組ボックスです。
マリオの全盛期に焦点を当てたこの3枚のディスクには、
オデオンからヴィクターに移籍した32年から、
29歳で引退する35年までの47曲が収録されています。
先にあげたカルメン・ミランダとの“Alô Alô” ほか、
ラマルチーニ・バボとのデュオも入っています。

ピシンギーニャ、ルイス・アメリカーノ、ドンガなどの
名手たちによるグァルダ・ヴェーリャのオーケストラ・サウンドや、
カニョートのコンジュントの軽快なショーロ伴奏が聞ける、
古典サンバの味わいが凝縮された、ぼくの最愛のボックスです。

[10インチ] Francisco Alves e Mario Reis "OS DUETOS DE FRANCISCO ALVES E MARIO REIS" Odeon MODB3075
Mario Reis "UM CANTOR MODERNO" RCA/BMG 74321931792

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