ギリシャ歌謡三連チャンの最後は、華ある女性シンガーのアルバム。
ヨルゴス・ダラーラスやグリケリアなどトップ・シンガーたちの眼鏡にかない、
コンサートのコーラス・シンガーとして起用されてきた、ソフィア・パパゾグルー嬢です。
ベルギー、ブリュッセルに生まれ、家族とともにギリシャ、テサロニキへ移住し、
その後6歳の時から歌いはじめたというソフィアは、96年にCDデビューし、
玄人好みのシブい作品を作ってきた人とのこと。
ソロ・アルバムを聴くのは本作が初めてなんですけれど、ライカ新世代というか、
エレフセリア・アルヴァニターキ以降のシンガーという印象を受けました。
ひとことでいえば、かつてのギリシャ歌謡が持っていた飾り気のない無骨さがなくなり、
愛想がよくなったということでしょうか、
歌い口はソフトになり、世界共通言語のポップスが下地になっているのを感じます。
といっても、あくまでもモダン・ライカ路線を貫いているので、
いわゆるグリーク・ポップとは一線を画す、
トラッドなギリシャ歌謡の味わいをちゃんと残しているんですけれどもね。
本作は正調ライカの合間に差し挟まれる、
ラテン調、マヌーシュ・スウィング調、トルコ古典風の曲が聴きものとなっています。
特に、トルコの軽古典~シャルクを思わせる曲にしのばされている、
アラブの香りやバルカンの響きには、ゾクゾクしてしまいますね。
ロック寄りになったり、汎地中海音楽の様相をみせたりと、
練り合わせる要素によって、さまざまな表情をみせるモダン・ライカですけれども、
バルカンからアナトリアに連なるギリシャとトルコの古層に触れたサウンドは、
たまらなく魅惑的です。
Sofia Papazoglou "O HTYPOS TIS KARDIAS MOU" Music Links Knowledge MLK3221 (2015)