またも南ロンドン発のジャズの好アルバムに遭遇しました。
アルト・サックス奏者で作曲家のキャシー・キノシ率いる
シード・アンサンブルのデビュー作。
1年半も前に出ていたんですね。
アルト・サックス、テナー・サックス、トランペット2、
トロンボーン、チューバの6管を擁し、
ピアノとローズには、レギュラー・メンバーのサラ・タンディと
ゲストのジョー・アーモン=ジョーンズが、曲により弾き分けています。
ジョー・アーモン=ジョーンズが弾く曲では、
ネオ・ソウルのサウンドがぐっと前面に出てくるところが、いかにも彼らしいところ。
そしてチューバには、シャバカ・ハッチングスのサンズ・オブ・ケメットのメンバーとして
注目を浴びるテオン・クロスが起用されていて、ここでも大活躍をしています。
重厚なベース音で始まるオープニングに、60年代ジャズの予感を覚えていると、
ホーン・セクションの分厚いハーモニーが炸裂する大胆なコンポジションとアレンジに、
いきなり金縛りにあってしまいました。テオン・クロスのチューバばかりでなく、
ミゲル・ゴロディのトランペットも、目の覚めるようなソロを聞かせてくれます。
シード・アンサンブルには、60年代から現代のジャズまで
シームレスに繋がるジャズの語法が共有されていますね。
政治・社会問題に強くコミットしたキャシーのシアトリカルなコンポジションを、
ネオ・ソウルやアフロビートのサウンドを加味しながら、
スケールの大きな一大音楽絵巻に仕上げる手さばきは、
黒人解放運動とジャズが連動していた時代から連綿と続く、
ジャズのブラックネスを継承していると言って過言ではないでしょう。
チェリーズ・アダムス=バーネットのソウルフルなヴォーカルや、
Xana のポエットにMr Ekow のラップが飾る現代ジャズの意匠は、
そのままUKブラック・ジャズのレガシーの証明となっています。
SEED Ensemble "DRIFTGLASS" Jazz Re:freshed no number (2019)