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ギネア=ビサウとカーボ・ヴェルデの邂逅 バンデ=ガンボア

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Bandé-Gamboa.jpg

う~ん、これは、ギネア=ビサウとカーボ・ヴェルデの音楽に
魅せられてきた者には、感慨深いプロジェクトですねえ。
リスボンにそれぞれの国のミュージシャンを集め、
両国の独立まもない70年代後半から80年代の曲を再演するという、
企画アルバムの登場です。

この企画を立てたのは、フランスのビートメイカーのガッツという人だそうで、
トロピカル・グルーヴ系(そんなクラブ・シーンがあるんだ!)の最重要人物なんだとか。
エグゼクティブ・プロデューサーの、リスボンのDJでリサーチャーの
フランシスコ・フィニーニョ・ソウザがこのプロジェクトの実質的な仕切り人で、
自身のコレクションから選曲して、レパートリーを決めています。

なんせマーケットのちっちゃなポルトガル語圏アフリカのポップスなので、
こういうモノ好きなDJたちが現れてくれない限り、なかなか注目は集まらないから、
ありがたい企画でありますね。カーボ・ヴェルデはまだしも、
ギネア=ビサウのポップスなんて、まるで知られていませんからねえ。

全12曲、前半6曲がギネア=ビサウの音楽家によるセッションで、
後半6曲がカーボ・ヴェルデの音楽家によるセッション。
ギネア=ビサウ・セッションはグンベー、
カーボ・ヴェルデ・セッションはフナナーが中心となっていて(ラストはタカンバ!)、
70~80年代当時のままではなく、今の若者にアピールするよう、
サウンドをブラッシュ・アップさせています。
90年代のエレクトリック・フナナーとも違うサウンド・デザインで、
BPMを落としたスローなフナナーなど、いかにもイマっぽい工夫ですね。

Zeca e Zeze Di Nha Reinalda  N’KÁ POR SI.jpg

アルバムのフックとなる曲を紹介しておくと、
カーボ・ヴェルデでは、ゼカ・ニャ・レイナルダ作の‘Segunda’。
ライナーには、ゼカが04年に出したソロ作“DIA DIA” の収録がオリジナルと
書かれていますが、う~ん、ちょっと、これは違うなあ。
この曲は、ゼカとゼゼとの兄弟名義による82年作“N’KÁ POR SI” 収録曲が初演。
“N’KÁ POR SI” は、『ポップ・アフリカ800』にも掲載した名作です。

N’Kassa Cobra  1982.jpg   N’Kassa Cobra UNIDADE LUTA PROGRESSO.jpg

ギネア=ビサウの方では、ンカッサ・コブラの83年作の収録曲‘Dunia Bé Tené’。
ンカッサ・コブラは、俳優としても活躍した歌手のラミロ・ナカが
70年代半ばに結成した、ギネア=ビサウの名バンドです。82年のデビュー作は、
軽快なグンベーと疾走するルンバが詰まった傑作で、セカンド・アルバムの83年作も、
トゥティ・ネネほかパワフルなヴォーカル陣が魅力のアルバムでした。
『ポップ・アフリカ800』には残念ながら載せられなかったので、
ここに書き残しておかなきゃ。

ほかにも、ギネア・ビサウ独立時に活躍した伝説的なバンド、
コビアナ・ジャズの未発表曲が2曲取り上げていることも、注目したいですね。
ぼくもコビアナ・ジャズは名前を知るばかりで、
99年に出たトリビュート・アルバムしか聴いたことがなかったのですが、
ライナーによると、コビアナ・ジャズのディスクは存在せず、
国営ビサウ・ラジオに残された音源があるだけとのこと。
フランシスコ・フィニーニョ・ソウザが
その音源をデジタル・コピーしてこの曲を知ったらしく、
いつか正規にリイシューしてもらいたいものですねえ。

ギネア=ビサウ、カーボ・ヴェルデのどちらのセッションも演奏力は高く、
フィーチャーされたシンガーたちの力量も申し分ありません。
クレジットされたミュージシャンは知らない名前ばかりなんですが、
在リズボンのPALOP出身ミュージシャンの層の厚さがわかります。

かつてのカーボ・ヴェルデとギネア=ビサウは、奴隷貿易の中継国であったばかりでなく、
植民地時代には、カーボ・ヴェルデのたび重なる旱魃で、
多くの労働者がギネア=ビサウへ出稼ぎや移住するなど密接な交流があり、
独立当初は統一国家として、連邦制の建設が夢見られていた両国です。

カーボ・ヴェルデとギネア=ビサウの独立運動を率いた革命家で、
ギネア=ビサウ独立の父と称えられるアミルカル・カブラルに捧げられた本作は、
両国の音楽の未来を展望する記念碑になりましたね。
アフロビートやエチオピアン・ポップスがグローバル・ミュージックへ発展したのには、
クラブ・シーンが果たした役割が大きかったように、
新たにスポットが当たったグンベーやフナナーがどこまで広がるのか、楽しみです。

今回のバンデ=ガンボアのプロジェクトも、次回は両者のセッションを期待したいですね。

Bandé-Gamboa "HORIZONTE – REVAMPING RARE GEMS FROM CABO VERDE AND GUINÉ-BISSAU"
Heavenly Sweetness/Pura Vida Sounds PVS012CD (2020)
Zeca e Zézé Di Nha Reinalda "N’KÁ POR SI" Sons D’África CD470/04 (1982)
N’Kassa Cobra "N’KASSA COBRA" Sons D’África CD441/03 (1982)
N’Kassa Cobra "UNIDADE LUTA PROGRESSO" África Sons CD211.2 (1983)

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