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33年ぶりに蘇った作品と引退劇 ハリス・アレクシウ

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Haris Alexiou  TA TRAGOUDIA TIS XENITIAS.jpg

ギリシャ歌謡の帝王は、ヨルゴス・ダラーラスが不動の地位を保っていますけれど、
女王ハリス・アレクシウの方は、2000年代を最後にすっかり衰えてしまったことは、
誰もが認めざるを得ないところだったのではないでしょうか。
ぼくも09年の“I AGAPI THA SE VRI OPOU KAI NA’SAI” を最後に、
ハリスの新作を買うのをやめてしまい、
10年代に入ってからは、新作のニュースを聞いても、
試聴すらためらうようになっていました。

4月に出た本作も横目にしたままだったのですけれど、
ある時ふと聴いてみたところ、往年の歌いぶりが蘇っていて、びっくり。
ソッコー、ギリシャにオーダーしましたよ。
ところが、COVID-19の影響で、待てど暮らせどいっこうに届かず。
いつもなら2週間くらいで到着するところなのにねえ。
そうこうしているうちに、このアルバムは、87年にお蔵入りとなっていた
未発表作品だということがわかり、どおりで声がハツラツとしているわけだと納得。

それにしても郵便事情の混乱ぶりは、本当に酷いですね。
アイルランドやドイツのように、日本向け郵便物をいまだに停止している国もあれば、
発送は受付ていても遅配が当たり前で、ひと月で届けばまだいいほう。
未着のまま行方不明になってしまったのが、3件も連続発生するなんて、異常ですね。
ほかにも、再発送分と最初の発送分が同時に届いてみたり、
未着の問い合わせをした途端、こちらの確認もなしにいきなり返金してきたりと、
業者の対応もぞんざいなところが目立つようになりました。

まだ来ない~、とボヤいていると、今度はハリス引退のニュースが。
6月3日、ギリシャ国営放送ERTのラジオ番組で、
「声が私のいうことを聞かなくなったの。やめるべき時が来たのね」と語ったとのこと。
33年ぶりに未発表録音をリリースすることにしたのも、
引退の覚悟をすでに決めていたからだったのかもしれませんね。

87年録音といえば、ハリスがライカ歌手として、もっとも脂ののっていた時期。
選ばれた10曲は、ミキス・テオドラキス、パナヨティス・トゥンダス、
ヴァシリス・ツィツァーニス、ステリオス・カザンジディスといった
レンベーティカ時代の曲の数々。
ハリスは亡命者たちの声なき声を蘇らせるかのように、じっくりと丁寧に歌っていて、
その重みのある歌声からは、人々の情念がどろりと零れ落ちてくるかのようです。
87年という当時でさえ、すでに古典的なレパートリーだった曲の数々に
生々しい息吹を再び与え、圧倒的な歌ぢからで蘇らせた、迫真の曲集です。

Haris Alexiou "TA TRAGOUDIA TIS XENITIAS" Minos 0602507161927

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