今年75歳となるマリのヴェテラン・ギタリスト、ママ・シソコの新作。
ひょっとすると、マリ最長老のギタリストなんじゃないのかしらん。
45年生まれのママ・シソコは、叔父のババ・シソコのもとでンゴニを学び、
その後独学でギターを覚え、ンゴニをギターに移し替えた
マンデ・スタイルのギターを弾き始めます。
マリの初代大統領モディボ・ケイタにギターの腕前を見初められて、
国立伝統音楽合奏団に加わり、68年のクーデターでモディボが失脚した後は、
マラビージャス・デ・マリの元メンバーたちとともに
ナシオナル・バデマを結成し、リード・ギタリストとして活躍しました。
その後、80年代半ばから10年近く、
アリ・ファルカ・トゥーレのバックで弾いていたそうですけれど、
ママ・シソコが弾いているアリのレコードって、見当たらないですね。
ライヴ演奏が中心の活動だったんでしょうか。
ママ・シソコの代表作としては、99年の“SOLEIL DE MINUIT” がありますけれど、
本作はそれ以来のソロ・アルバムと思われます。
録音は16年と18年に行われていて、17年に亡くなったソク(一弦フィドル)の
名プレイヤー、ズマナ・テレタが参加しているのが、聴きどころ。
ラフな感じのドラムスと、アーシーな味のあるオルガンの参加が、
カジュアルなローカルの雰囲気を醸し出していて、グッときますねえ。
パリのスタジオでレコーディングしたら、この感じは出ませんよね。
タイトルがいみじくも示しているとおり、マンデのソウルが伝わってきますよ。
ンゴニの奇才、カンジャファがここでも張り切ったプレイをしていて、
ママ・シソコより前に出しゃばって(笑)、ばっきんばっきん弾きまくっています。
ママ・シソコは余裕のプレイで、カンジャファの裏に回り、カウンターを弾いていますよ。
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2016-12-12
https://bunboni58.blog.ss-blog.jp/2017-11-01
なんと、カンジャファはママ・シソコの甥っ子なんだそうで、その縁もあって、
ヴァンサン・ドルレアンのサン・コモンテールでレコーディングが実現したんですね。
ママの子供たちも総出で参加していて、なかでもベースのモディボ・シソコは、
サリフ・ケイタのバンドにも起用された名プレイヤーです。
フィーチャリングされたヴォーカルとバック・コーラスにも、
一番若いジェスからマドゥ、ジャウォエ、アワ、キジャトゥまで、
全員ママの息子・娘たちで、まさしくソウル・ファミリーなのでした。
Mama “Badema” Sissoko "SOUL MAMA" Sans Commentaire SC07 (2020)
Mama Sissoko "SOLEIL DE MINUIT" Buda 82990-2 (1999)